ドローン基盤を商用化へ--KDDIがモバイル通信ネットワークを活用

大河原克行

2017-01-11 07:00

 KDDIは、モバイル通信ネットワークを活用したドローン基盤「スマートドローンプラットフォーム」を2017年にも商用化する計画を発表した。同事業の推進においては、プロドローンとゼンリンと提携することで合意。また、KDDIは、プロドローンが第三者割当増資によって発行する株式を3億円で取得することも発表した。

プロドローン
(左から)プロドローン 代表取締役社長の河野雅一氏、KDDI 執行役員常務 商品・CS統括本部長の山本泰英氏、ゼンリン 上席執行役員 第二事業本部長の藤沢秀幸氏

 スマートドローンプラットフォームは、4G LTEネットワークに接続するドローン機体、3次元地図、運航管理、クラウドで構成。これらのプラットフォームを活用することで、モバイル通信ネットワークにつながったドローンの自律飛行や衝突回避に対応した飛行ルート管理のほか、ドローンが取得したデータの蓄積や分析も可能になり、これらをトータルソリューションとして提供することになる。

 KDDI 執行役員常務 商品・CS統括本部長の山本泰英氏は「これまでのドローンは一定の無線空間の中で、目視できる範囲で人が操作するしかなかった。だが、これを4G LTEのエリアにおいて操作できるようなると、広範囲に自律飛行したり、遠隔地からドローンの制御が可能になる。そうした世界はすぐにやってくる」とし、「そのために必要なのが、ネットワークとドローン機体、3次元地図、運航管理、クラウドの組み合わせである。4Gや5Gネットワークに接続しながら、さまざまな気象条件に対応したり、鳥などからの衝突回避機能を持った耐久性のある機体と、高いビルを乗り越え、飛行禁止区域を回避するための3次元地図、複数のドローンを制御する運航管理、そしてデータを収集し、分析することで、そこから価値を創出できるクラウドサービスを、スマートドローンプラットフォームとして提供する」とした。

 KDDIでは、人口カバー率99%以上の4G LTEネットワークに加えて、基地局の活用やクラウドサービスなどのアセットを提供。ドローンの遠隔操作や自律飛行を支援する。

 「スマートフォン向けのアンテナは下方向を向いているが、ドローンは150メートルまで上昇が可能。今後、実証実験を通じて、新たな基地局が必要であるかどうかも検討していくことになる」とした。

 また、プロドローンでは、4G LTEネットワークに直接接続し、遠隔地からも自由にフルコントロールが可能な高機能な機体および制御システムを開発。ゼンリンは、保有している地形、建物情報をベースに空域情報を3次元化した「空の3次地図」を開発。ドローンの自律飛行において、機体を安全に誘導するための基盤構築を行う。

 KDDIは、ドローンをモバイル通信ネットワークで利用するために、2016年11月15日に総務省から、「無人飛行機における携帯電話の利用に関わる実用化試験局の免許」を取得しており、今後、3社で実証実験を行い、2017年には、スマートドローンプラットフォームの商用化を目指すという。

 プロドローン 代表取締役社長の河野雅一氏は、「ブロドローンは、世界で初めて、直接作業ができるアームをつけたドローンを開発したことで、ドローン業界から、ドローンの世界が大きく変わり、市場が一気に広がったといわれた。そのほかにも、対象物に張り付いて作業ができるドローンや水中で作業をするドローン、高度写真測量ドローン、違法ドローン捕獲ドローン、大型シネマカメラ搭載空撮ドローンなど、世界初となる先進的ドローンをこれまでに開発してきた」とする。

 さらに「産業用のドローンニーズは無限」と同氏。マイクロドローンから大型ドローンまで、さまざまな産業用ドローンが使われるようになり、特に、ドローンは、2020年以降、一気に需要が拡大すると見られていると指摘。これを利用すれば、東京の熟練した機械作業者が、九州の機械を遠隔から作業するといったことが可能になるが、ドローンサービス事業者が、ドローンを、効率的に、安心、安全に活用するには、高機能のドローン機体と高度な通信技術との連動が必要という。

 「スマートドローンプラットフォームに、さまざまなノウハウをフィードバックすることで、日本のドローン産業を盛り上げたい」としている。

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