日本オラクルは5月9日、人材管理向けのクラウドサービス「Oracle HCM Cloud」の新機能となる学習・研修の「Oracle Learning Cloud」を追加し、国内で本格展開すると発表した。SNSの要素を取り込み、従業員同士のつながりから積極的なスキルの向上を図れる仕組みを提供する。
Oracle Learning Cloudは、ウェブブラウザやモバイルデバイスを通じたeラーニングや集合研修のほか、トレーニングやテスト、学習実績の管理や分析、個々の従業員のスキルアップに向けたアドバイスといった人材育成に関わる機能を持つ。「ソーシャルラーニング」と呼ばれるソーシャルメディアを学習に活用できる点が特徴だとしている。

日本オラクル クラウド・アプリケーション事業統括 ソリューション・プロダクト本部HCMソリューション部長 津留崎厚徳氏
記者会見したクラウド・アプリケーション事業統括 ソリューション・プロダクト本部HCMソリューション部長の津留崎厚徳氏によれば、企業・組織の人事部門が抱える人材育成にまつわるさまざまな課題の中で、「ミレニアルズ」と呼ばれる20歳代以下の若手従業員のスキルをいかに高めていけるかが焦点になっている。
同社が新サービスの特徴とするソーシャルラーニングは、ミレニアルズが日頃から慣れ親しんでいるソーシャルメディアの要素を取り込むことで、従業員がお互いに学ぶことを共有し、関係を深めていくことで、全体的なスキルアップにつなげる効果が期待される。
例えば、日常業務の中での気付きや役立つことをスマートフォンで撮影、アップする。投稿内容に「いいね」と共感したり、コメントし合ったりすることで、それがチュートリアルとして広く活用されていくという。

研修や学習にソーシャルの要素を取り入れたというOracle Learning Cloud
津留崎氏は、従来型の研修や学習にソーシャルラーニングを組み合わせることで、従業員が講義の内容を受け取るだけでなく、実業務へ自発的に生かしやすくなると説明。また、ソーシャルメディアのように従業員が自身のプロフィールを社内に発信して、従業員同士のコラボレーションも醸成されやすくなる。
Oracle Learning Cloudは、海外では2016年から一部の顧客企業向けに提供されていたが、国内での関心の高まりを受けて、提供を本格化させるという。

慶應義塾大学大学院経営管理研究科 特任教授の岩本隆氏
ゲストスピーカーとして登壇した慶應義塾大学大学院経営管理研究科 特任教授の岩本隆氏によると、近年の人事領域では優れたスキルを持つ人材(タレント)をどのように取り込むかが関心事項の1つにあり、そのキーワードがミレニアルズだという。
この他にも、人事の仕組み自体の変革(トランスフォーメーション)や、企業と従業員との関係性の改善(エンゲージメント)、財務会計データと人材データを相関分析(ピープルアナリティクス)なども関心が高く、人材活用にITを生かす「HR Tech」が注目されている。
岩本氏は、「海外は5年単位でトランスフォーメーションのプロジェクトを進める企業が多く、現在は開始から3、4年目で成果が出始めている状況。人材活用につながるデータやその分析のための環境整備に苦労するケースが多い」と解説する。今後は分析したデータをもとに、従業員の生産性を予測したり、向上のための施策を行ったりするプロセスを自動化することが焦点になるという。
HR Techの主な目的は、ITを利用して優秀な人材の登用や活用の促進、流出の抑止につなげることで、ビジネスの競争力の維持・向上を図ることにあり、海外ではHR Techに意欲的な企業が多いとのこと。岩本氏によれば、国内でも人事体制があまり成熟していないベンチャー企業や後継者に悩むオーナー企業でHR Techへの関心が高い。「国内の大多数を占め、常に人材の確保に悩む中小企業にこそHR Techを活用してほしいところだが、まだ認知が進んでいないのが課題」(岩本氏)という。

Oracle HCM Cloudの今後のバージョンアップでは、チャットボットによる人事ヘルプデスク機能などを追加するという