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HRTechが救う人材マネジメント受難の時代

笛木 克純(A.T. カーニー プリンシパル)

2017-05-08 07:30

人材マネジメント受難の時代

 かつて日本企業の強みは「人材」であった。特にものづくり企業の強みは、現場の優秀な技術者や社員に支えられていた。多くの企業のトップも「人材こそが経営の根幹」と発言し、いわゆる三種の神器(新卒採用・終身雇用・企業別組合)が日本的人材マネジメントを支えていた。

 しかし、いつからか、優秀な日本的人材マネジメントに支えられているものづくり企業は、新興国企業との競争に晒され、そのいくつかはマーケットからの退場を迫られるようになった。

 そんな中、日本企業の人材マネジメントは新たな課題に直面している。例えば、次のような課題がある。

 1.優秀な新卒学生を採用できない

 優秀学生はキャリアアップの機会や待遇のよい外資系企業を目指す傾向が顕著になっている。旧来の人事制度の枠組みでは優秀学生の期待に応えられず、その結果、採用人材の質の低下が顕著になりつつある。またせっかく採用しても、多くの社員が3年以内に離職をしてしまう。

 2.中途人材を活用できない

 優秀な中途人材を採用しようとしても、社員との待遇のバランスで魅力的なオファーを出すせない。また、いざ中途人材を採用しても、社員との融合に失敗し、早々に止められてしまう。

 3.社内滞留人材を活用できない

 近年取り組んできた業務効率化と定年延長の流れの中で、社内で人材はむしろ余り気味である。適材適所の掛け声のもと新たな職を割り当てようとするが、ミスマッチがいたるところで発生してしまう。

 4.やるべきことが山積みである

 日本企業のダイバーシティ促進の掛け声のもと、育児休暇制度などの整備、メンタル面でのサポート、外国人社員の採用、複数の雇用形態の導入などのインフラの構築を人事部が一手に引き受けることで、皮肉なことに人事部の人材マネジメントができなくなりつつある。

 5.人事部の人手が足りない

 このように、人事部のやるべきことが増える一方で、人事部の人員は削減されている。減らされたスタッフで仕事に取り組むために、企画系の業務まで手が回らず、その結果、仕事の質がさらに低下していく負のサイクルが生じている。

八方ふさがりの人事部

 人事部は本来。経営の想いと現場の声をつなぐことが役割である。しかし、現実は、人不足の中でより高度化する経営と現場からの要求に応えられなくなりつつある。なぜこのような袋小路に陥ったのか?その原因は、日本企業が「仕組み重視の人材マネジメント」に舵を取りすぎたことにあるのではないか。

 目標管理制度、コンピテンシー評価制度、360度評価制度、経営幹部選抜制度など、人事部はさまざまな新しい人事制度の導入に躍起になった。しかし、これらの仕組みは日本企業の人材マネジメントの強化につながらなかった。現場は度重なる制度導入に混乱し、また、疲弊した。経営側は、制度を使いこなせない社員に不満を募らせた。制度という「ハコモノ」による人事制度改革は、その運用する人材の不足によって、十分に機能しなかったのである。

 また、人事領域におけるITの活用も、他の部門のIT化に比して、特に遅れている印象がある。なぜならば、人事情報という機微情報を扱うためにトライアンドエラーがしにくく、信頼に足るべき情報が集まりにくい(例えば人事評価の甘辛が放置されがち)、さらに、フィーリングでの意思決定が横行しており人事情報に基づいたニーズが実はなかった、という人事領域特有の課題のためである。

 そして、今、人事部がこの機能不全を解消するために熱い視線を注いでいるのが「HRTech」である。HRTechとはビッグデータやAI技術を活用した新たな人材マネジメントソリューションの総称であり、これまでの人事部が抱えていたITの悩みを乗り越え、人材マネジメントに悩む日本企業の救世主となることが期待されている。

 いくつか例を挙げれば、AIによる人材採用や人材配置、ITを活用した教育研修プログラム、メンタル面で負荷のかかっている社員の早期発見など、はすでに先進企業で導入され、一定の成果をあげつつある。

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