松岡功の一言もの申す

富士通の人事部門が「Oracle HCM Cloud」を採用した理由

松岡功

2016-08-10 11:59

 富士通が先ごろ、米Oracleとクラウド事業で戦略的提携を行った一環で、人材管理向けSaaS「Oracle HCM Cloud」を採用するとともに、そのノウハウをもとに外販することを発表した。富士通の人事部門がOracle HCM Cloudの採用に踏み切ったのはなぜか。

グローバルマトリクス体制に向けた人事システムの刷新

 「富士通グループとして、グローバルな人事情報システムを再整備する必要があった」―― 富士通 執行役員 人事本部長の林博司氏は、日本オラクルが先ごろ、都内ホテルで開催したユーザー向けプライベートイベント「Oracle Modern Business Experience 2016」の基調講演でこう語り始めた。このほど「Oracle Human Capital Management(HCM) Cloud」の採用を決めたユーザーとして登壇した林氏は、その経緯について次のように説明した。

 「グローバルな人事情報システムを再整備する必要が出てきたのは、世界の地域ごとに分けた顧客軸と、当社が展開している製品やサービスなどによる事業軸からなるグローバルマトリクス体制を2014年度に採用したからだ。それまでは顧客別あるいは事業別に人事管理の最適化を図ってきたが、新体制になってグローバルな人材ポートフォリオマネジメントを実現することが、私たちの大きな課題となっていた」

 人材ポートフォリオマネジメントとは、人材を適材適所に配置することによって、組織や事業のパフォーマンスを向上させるための管理手法である。例えば、グループ全体の人材をグローバルで可視化し、さまざまなやりとりをできるようにするために、富士通は従来の人事情報システムを刷新する必要があった。しかも、グループ全体で12万5000人を数える社員を対象にできるシステムとなると、候補となるツールの数は限られていた。

最大の決め手は「機能追加にも一緒に取り組む姿勢」

 では、富士通はなぜOracle HCM Cloudを採用したのか。発表されたのは、クラウド事業における両社の戦略的提携の一環ではあるが、人事部門としては、あくまでユーザーとして採用の意思決定を行ったはずだ。その決め手になったのは何なのか。この点について、林氏は次のように語った。

 「最大の決め手となったのは、グローバル対応のHCMとして非常に優れているツールであると判断したのと、私どものような日本企業がグローバル展開を図る上で追加したい機能や業務プロセスについて、オラクルの開発チームも一緒になって取り組んでいこうという姿勢を感じることができたからだ。SaaSの場合、ユーザーからすると機能の追加などは一切できないケースが大半だが、とりわけ人事管理については日本企業ならではの視点を盛り込んだ機能も必要になる。そうした点を協力して反映していけるようにしたい」

 両社がこれからやろうとしていることは、いわば人材のデジタル化だが、採用の決め手はかなりアナログ的な「姿勢」にあったようだ。でもこれは非常に大事なことである。

 ただ一方で、要はカスタマイズの有無の問題なのか、と少々腑に落ちないでいたところ、林氏とともに登壇していた日本オラクル専務執行役員クラウド・アプリケーション事業統括の下垣典弘氏が、「ご採用いただいてありがとうございます」と返しながら、こう語った。

 「林さんとは、グローバルに展開するHCMにおいて日本独自の機能がどこまで求められるのかについて、日々議論しながら一緒に進めている。今後も議論を深めながら突き詰めていきたい」

 このコメントで筆者もとりあえず納得できた。富士通はOracle HCM Cloudをまず欧州で適用するとともに、グローバルではタレントマネジメントツールの利用を先行する構えだ。今後、両社のHCMにおける協業がどのように推移していくのか、注目しておきたい。


富士通 執行役員 人事本部長の林博司氏(右)と日本オラクル専務執行役員クラウド・アプリケーション事業統括の下垣典弘氏

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