クラウドトップガン対談

富士通のクラウド戦略--勝負はPaaS、SIノウハウを続々「K5」に

吉澤亨史 怒賀新也 (編集部)

2016-04-08 07:30

日本でクラウドをリードし、現在は経済産業省などのコンサルティングを手掛ける研究者、NCRIの津田邦和氏が、今後クラウドを軸に生まれる新たな付加価値について、「トップガン」と呼ぶ各分野のキーマンと対談する。

津田 クラウドネットコンピューティングが(本質的な意味で)明確に提案され初めてから20年が経過しました。1995年には、OracleのLarry Ellison氏が「ネットコンピュータ」と命名してシンクライアントを提案し、Windows 95にTCP/IPが装備されてインターネットが一般化して、かつPCの大普及時代に入りました。

「Dr.津田のクラウドトップガン対談」の3回目は、富士通執行役員常務グローバルマーケティング部門長の阪井洋之氏を招く。
「Dr.津田のクラウドトップガン対談」の3回目は、富士通執行役員常務グローバルマーケティング部門長の阪井洋之氏を招く。

 1998年前後には仮想化が提案され、2000年以降にブロードバンド通信の普及、2005年にはマルチコアCPUによって、クラウドの実用的な環境が整ってきました。そして2007年にはスマートフォンが爆発的な普及を始め、いよいよクラウドは本格的に世の中の基盤として明確にそのポジションを固めています。

 「Dr.津田のクラウドトップガン対談」の3回目は、重点方針としてクラウドに取り組んでいる富士通株式会社執行役員常務グローバルマーケティング部門長の阪井洋之氏を招く。富士通の最新かつ近未来のクラウド戦略について語ってもらいます。

クラウドが事業の主流に

 津田 阪井常務とは10年来の付き合いですが、私たちがクラウドに取り組み始めたのは、ちょうどWindows 95が出て、Javaが始まった1995年でした。そこで非常に大きなことが始まりました。

 それは、Windows 95にTCP/IPが標準搭載されたことです。それにより、多くの人々がインターネットに接するようになりました。ただ、当時はメールのやり取りやホームページの閲覧など、限定的な利用でした。

 しかし、それから10年経った2005年に、また大きな変化がありました。それは、デュアルコア、クアッドコアのCPUが出てきて、仮想化基盤などがストレスなく動くようになってきました。コストも下がり、本格的なクラウド時代が到来したわけです。これは非常に大きな動きになりました。

 阪井さんとはその直後に出会いました。クラウドというマーケットがすごく大きなものになるかもしれないと、気がつき始めた時期です。ただ、まだ確信は持っていませんでした。それが2005年前後です。PCとインターネットは当たり前になってきていましたから、クライアント/サーバも含めてクラウドモデルが離陸を始めたのです。

 富士通も2007年ごろには、もう本格的な取り組みをしていて、阪井さんもその過程にいたわけです。阪井さんは当時、クラウドに対してどのような感触をお持ちでしたか。

2007年 クラウド離陸期の様子

富士通株式会社執行役員常務グローバルマーケティング部門長の阪井洋之氏
富士通株式会社執行役員常務グローバルマーケティング部門長の阪井洋之氏

阪井 当時、アプリケーション分野を担当していました。当社は、2000年前後から、パッケージをサービス型で提供する形態、ASPのビジネスを進めていましたが、その後、SaaSという新しい概念が出てきました。そこにSalesForceのような新しいソリューションが出てきました。実際にSalesForceを使ったりする中で、SaaSやクラウドは、ASPと違い、カスタマイズが自由に、しかも簡単にできることに衝撃を受けました。これは大きな変化がくるのではないかと感じました。

 前後して、わたしは富士通全体のクラウド戦略を推進していく立場となり、SaaSだけでなくIaaS、PaaS、あるいはプライベートという、クラウドビジネス全体をどう展開していくのかといったことに取り組みました。

 市場ニーズの変化が非常に早い昨今、クラウドの持っているスピード感、小さく始めて大きく育てる、すなわちスモールスタートによる新たなコストの考え方、ネットワークを介しての拡がり、モバイルに対応しやすいことなど、いろいろな要素を考えていったときに、これはビジネスの主流になっていくと考え、さまざまな取り組みを開始しました。2007年ごろから始めた「SaaSパートナープログラム」もその1つで、数多くのパートナー様にも参画いただきました。

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