富士通は3月30日、金融分野向けソリューションの新体系「Finplex」を発表した。デジタルビジネスプラットフォーム「MetaArc」に対応したもので、業種や業務のノウハウをインテグレーションするコンセプトである「FUJITSU Knowledge Integration」に基づいた第1弾サービスと位置付けている。
Finplexの一部として、さまざまな金融サービスで共通的に利用できるAPIを提供。これを活用することで、新たな金融サービスの創出や迅速な展開が可能になるという。Finplexは、Finance(金融)とComplex(複合)を融合して命名した。
金融業界でのモバイルやクラウドの活用、FinTech系企業との連携など、業界の枠を超えた共創による新たな金融サービスを創出しようとする動きが活発化する中で、富士通が、基幹システムをはじめとする金融機関のさまざまなシステム構築を手掛けて蓄積してきたノウハウと最新の技術を組み合わせることで、顧客との共創を実現する金融分野向けソリューションを新たに体系化したという。
Finplexのコンセプトイメージ(富士通提供)
富士通 経営執行役員 金融システム事業本部長 時田隆仁氏
経営執行役員で金融システム事業本部長の時田隆仁氏は、「これまで金融機関が重視してきたのは、信頼性や安心感、業務効率化やコスト削減であったが、今後は、金融サービスを利用する顧客に対して、新たな価値を提供でき、一人ひとりの顧客にあったサービスの提供が求められている」と現況を解説した。
続けて時田氏は「富士通にとっても、金融サービスを提供する金融機関のニーズを中心とする“SoR(System of Record)”ビジネスに加えて、金融サービスを利用するお客さまのニーズを捉える“SoE(System of Engagement)”ビジネスに対応していく必要がある。Finplexでは、SoE領域のシステムを素早く提供することで、お客さまのビジネスのデジタル化を加速させるとともに、ブロックチェーンやAI(人工知能)などの最新技術、オープンイノベーションの成果を積極的に取り入れ、継続的に成長させたい」と意気込みを語った。
Finplexは、MetaArc上からSaaSやPaaS、パッケージ、アプリケーション基盤として提供。ビジネスの方針や事業計画、予算、製品やサービスの提供時期などにあわせたソリューションを選択し、最小限のシステム開発だけで、迅速に業務プロセスの効率化や新たなサービスを実現できるという。
利便性と楽しさを提供する「UI/UX」、複数のチャネル間でシームレスに連携できる「オムニチャネル」、顧客の洞察を深化させる「アナリティクス」、顧客対応力を強化し営業活動を効率化する「スマート営業」の4つの領域に展開。まずは、これらの領域で価値を提供する。
2016年下期中には、オムニチャネル向けのAPIを提供。スマート営業では、保険分野向けのAPI、ローンに関するロボアドバイザー機能を提供するAPIを開発中であることを明らかにした。
オンプレミスの既存システムと連携させ、ハイブリッドで運用することも可能であり、SoR領域はオンプレミスの既存システムで運用しながら、SoE領域はFinplexでMetaArc上に構築し、それぞれをシームレスに連携しながら効率よく、統合運用できるという。
Finplexの先行事例として、南都銀行がICキャッシュカード一体型クレジットカード会員向け情報配信サービスに採用。モバイルアプリ基盤としてMetaArcを活用することで、スマートデバイスを制御できるという。
Finplexとして提供するソリューションを拡充する一方、富士通社内で生まれた金融サービスのビジネスアイデアに対して、迅速に投資判断して、サービスの具現化を目指す「金融サービスリーンスタートアップ企画プログラム」を4月から開始した。FinTechを代表とするスタートアップ企業の独創的なアイデアと発想力をつなぐことにも取り組むという。
富士通は2015年7月に金融機関やITベンダー、ベンチャー企業の共創で新たな金融サービスを創造する場として、「Financial Innovation For Japan(FIFJ)」を設立。現在、金融機関104社、FinTech系企業96社が参加しており、これらの取り組みもFinplexによる金融サービスの創出につながるとしている。
「業種連携が富士通の強みになる。共創プログラムを充実させることで、Finplexの成長につながる」(時田氏)