クラウドトップガン対談

富士通のクラウド戦略--勝負はPaaS、SIノウハウを続々「K5」に - (page 2)

吉澤亨史 怒賀新也 (編集部)

2016-04-08 07:30

Amazonがライバルになるという予想外の展開

津田 富士通という会社は、昔はメインフレームやオフコンなどのハードウェアや、もう少し最近だとシステムインテグレーションでいろいろな企業と競争していました。当然、自分のお墨付きのものを作ろうとしていたわけです。ところが、この時代に入っていくとそのモデルも変化します。IBMも、まさかAmazonという会社がライバルになるとは思っていなかったでしょう。

 しかし、技術的変化を考えると、実は必然で自然なのです。書籍をインターネットで販売することで自ずとクラウドの基盤ができてきます。ニーズがあれば、その仕組みを誰かに貸し出そうと思うわけです。当然、富士通も環境の大きな変化の中で、競合企業も変わるし、ビジネスのポイントも変わってきますよね。

 そこで阪井常務に聞きます。95年のJava、Windows 95、インターネット、2005年のデュアルコア、クアッドコアと来て、その10年後の2015年に、富士通は1つの方向転換に取り組み始めました。10年の節目ごとに訪れるこの分水嶺について、教えてください。

阪井 もともと当社は、早い段階でパブリッククラウド「S5」の提供を開始しました。お客様はいろいろなSaaSベンダーや企業で、主な用途はウェブサイトやCRM、ECなど、どちらかというと基幹システム領域よりはフロント領域や新規アプリケーションを作るときに、手軽に早くスタートできるということで使われ始めました。

 しかし今、基幹業務も含めてクラウドファーストという流れが加速しています。当社としてはフロント領域と基幹システム領域、今でいうSoE(System of Engagement)、SoR(System of Record)の区別なく、プラットフォームとしてクラウドでサポートしていく必要があると考え、今回富士通の総合力でお客様を支えるということで「MetaArc」というコンセプトを打ち出しました。

 Metaはギリシャ語で「超える」という意味があり、Arcは円弧の「弧」、アーチです。このネーミングには、1つの企業や業界にこだわらず、組織・企業・業界の枠を越え、人・もの・情報をつなぐことで、お客様とともにさまざまなデジタル革新を実現していきたいという思いを込めています。

 MetaArcは、デジタル革新を実現するプラットフォームです。近年、お客様はクラウドを始め、モバイルやビッグデータ・IoT、AI(人工知能)など、ICTの新しい技術を使ったお客様接点の変革や、ICTを活用した新たないビジネスモデル、サービスモデルへの進出など新規分野への投資を拡大させています。

 富士通はこのような新規領域と基幹システム領域を合わせてお客様のシステム全体をMetaArcで支えていきます。

 これまで大手のお客様の大規模システムというと、やはりオンサイトでの「プラットフォーム+インテグレーション」で構築していくというパターンが多かったのですが、これからは富士通SEによるシステムインテグレーションは基本的に全てMetaArc上で展開していきます。これはわれわれにとって、かなりの大転換です。

津田 2005年前後には基幹系はまさかクラウドにはならないだろうと思っていた。1995年ももちろんそう。しかし、実はSIEMやセキュリティなどさまざまなことが準備されてくると、基幹系がクラウド上で展開されないなどということは考えられません。

 今のお話で一番大きなことは、その時が来たということです。富士通は基幹系や業務システムと、IoTやモバイルクラウドのようなものを一体としてとらえ始めたわけですね。大きく舵を切ったわけですが、これは2015年の、日本国内IT業界の大きな変化だと思います。

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