Dr.津田のクラウドトップガン対談

雪氷と外気による「超高効率データセンター」を展望(1)

吉澤亨史

2016-12-12 11:00

 クラウドコンピューティング市場の拡大によって、かつて電子計算センターと呼ばれたデータセンターへの要望も変化しています。最大の要望は電力効率で、コスト競争の激化と2011年以降約1.3倍に値上がりした電気料金により、電力効率が悪いデータセンターは選択されなくなってきています。

NCRI会長で工学博士の津田邦和氏
NCRI会長で工学博士の津田邦和氏

 その中で、データセンターの電力効率を高めることを目的に「NCA寒冷地グリーンエナジーデータセンター(GEDC)推進フォーラム」という研究推進グループが2008年に発足し、寒冷地の気候特性を活用して、外気と雪氷によるハイブリッド冷房技術を構築してきました。その技術が実用的なものとなり、新しいデータセンター構築に採用されるようになりました。

 今回の「第4回 Dr.津田のトップガン対談」では、この「寒冷地の気候特性を活用した新しい超高効率データセンター」を新潟県長岡市に建設することを決定したデータドックの社長を務める宇佐美浩一氏に話を聞きます。

現在のニーズに対応できなくなった都内のデータセンター

津田氏 「ネットワークを活用したコンピューティング環境」が提案されて約20年が経過しました。それとともにハードウェア、ソフトウェアを集積するデータセンターも急激に増加し、現在では国内に400前後あります。これらは古い話ですが、70年80年代にメインフレームの設置場所として、電子計算センターというような言われ方をして建設されてきました。

 2000年前後からは、クラウドのためのサーバ設置、運用施設としてデータセンターと呼ばれるようになったわけです。電子計算センター(データセンターの昔の名前)は、メインフレームが極端に大きな重量であったために床荷重を強化する必要があったことや、電力と空調、通信を大容量で必要としたことから通常のビルには設置ができず、専用の施設が必要だったことから建設されたものです。

 昨今のクラウド環境におけるデータセンターも同じようなニーズに対応していますが、電子計算センター時代にはなかった新たな要求が出てきました。それは、クラウド市場拡大による競争激化の影響で、トータルコスト、つまり施設そのものに限らず電力効率も要求されるようになってきたわけです。

 電子計算センター時代は市場規模がそれほど大きくなかったことから、競争上での電力効率要求もそれほどではありませんでした。しかし、クラウド時代になると市場の拡大からも激烈なコスト競争が発生し、電力効率が悪いデータセンターはそれだけでもう選択されないといった状況も出てきています。ある試算によれば、クラウドサービスのコスト全体の50%前後が電力料金であるという報告もあります。

 電力料金はクラウドにおけるコスト要素、すなわちコンピューターのハード、ソフト、ネットワーク、営業、販売促進などの個々の費用のどれをも上回ることは間違いないでしょう。クラウドとデータセンターはコンピューター産業ですが、金額の大きな比率を占めるのは電力であり、電力サービス産業といってもおかしくないのです。

 このような中で、データセンターの電力効率を高めることを目的に「寒冷地GEDC推進フォーラム」という研究推進グループが2008年に発足し、寒冷地の気候特性を活用して、外気と雪氷によるハイブリッド冷房技術を構築してきました。

 このフォーラムにおいて、最大規模の時で100人、のべ200人以上の大学有識者、建設会社、IT企業、設備企業などの研究者技術者が議論してきました。現在では、これらの技術が実用レベルになり、新しいデータセンター構築に採用されるようになりました。

 そこでまず、宇佐美社長にデータドック社設立の狙いについてお聞きします。どのような動機でデータセンター事業をやろうと考えられたのでしょうか。現在のクラウド市場やデータセンター市場に対する認識を含めてお聞きしたいと思います。

データドックの社長を務める宇佐美浩一氏
データドックの社長を務める宇佐美浩一氏

宇佐美氏 まず、データドックの設立の理由は3つあります。1つ目は、データドックの親会社はメディックスといいまして、デジタルマーケティングの会社です。日々膨大なデータを収集し、その分析結果に基づいて売り上げの拡大や経営の効率化というようなご提案をしていますが、仕事を進めていく上で大きな壁があるのですね。

 データをより活用しようとすると、ウェブ上にあるデータだけでなく基幹データ、例えばユーザーの個人情報や購買履歴なども活用します。でも、そういったデータは情シスの担当者が管理しています。情シスの方はデータを守るというスタンスですので、データで攻めるというミッションのマーケティングセクションとの連携は、なかなかうまく進まないわけです。その当時から何とかしたいと考えていたわけです。

 お客様と同じ場に立ち、マーケティング担当者の方と情シス担当者が同じ目標に向かってコミュニケーションできるような機能やサービスを提供する会社になりたいと思いました。その方法論として、情シス部門と直接の接点をもつことが有効であり、データセンターを保有することでスピードアップするのではないか。これが一番最初の仮説でした。その確証が持てたので、始めることにしたのです。

 次にデータセンター市場についてですが、やはり実感も含めて伸びています。もちろんクラウド利用も伸びています。日本では、AWSやMicrosoft Azureに代表されるパブリッククラウドの利用は約3割で、これらが今後伸びていく傾向にあるとされています。

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