Dr.津田のクラウドトップガン対談

クラサバ大市場のクラウドへの大移動への対応

津田邦和(工学博士、NCRI会長)

2017-02-01 08:08

 30年にわたりネットワークとコンピューティング、ASP、SaaS、クラウドの研究開発、モデルプロジェクト構築、日系の大手ITを含めた幅広い企業コンサルティングを手掛けてきた工学博士、津田邦和氏が、ユーザーやプレーヤーの具体的な悩みに答え、必要な情報を提供することを目的に、誌面上に相談室を設置する。

【SIer A社からの相談】

 A社は、これまでオフコンの販売・保守から始めて、現在ではクライアントサーバへ顧客へのシステム設計とソフトウエア設定、アプリケーションカスタマイズ、システム設置・導入を主なビジネスとするSIベンダーとして、20年以上やってきました。いわゆるオンプレミスのクライアントサーバを事業としています。長年の経験もあり、顧客とのつながりは深く、大変良い関係を築いてきたと自負しております。

 ところが最近、これまでSIの業界団体では聞いたことのないB社さんという「クラウドを活用して顧客にIT利用環境を提供する」ベンダーが、弊社の顧客の一部のシステムについて採用され、取引が始まったようなのです。いまのところ、われわれの主戦場である基幹系のシステムではなく、周辺の軽いアプリケーションらしいのですが、どのように入り込んだのかは不明です。

 このような状況の中で、世の中では「クラウドファースト」という言葉もでており、我々のようなSIベンダーは、従来ビジネスの利益が低下していることも合わせて、将来の不安を感じています。

 そこでお聞きしたいのは、現在は周辺の一部のシステムだけなのですが、今後クラウドが基幹系へと展開されB社も参入して、我々のようなオンプレミス型SIベンダーが淘汰されていくようなことはあるのでしょうか?

 また、弊社のようなSIベンダーがクラウドの付加価値を獲得するには、国内大手ベンダーやAmazonのような大きな投資をする事業は難しいので、どのような対応をすればいいのでしょうか?

【Dr.津田からの回答】

工学博士、津田邦和氏
工学博士、津田邦和氏

 クラウド産業において従来は、基幹系以外の業務システムやコンテンツ配信などで展開され、2016年現在は新たにIoTやAIが脚光を浴びています。しかし、IoTとAIはまだ市場は形成されておらず、実は次のクラウド産業拡大のターゲットとしてA社さんのような基幹系業務システムのクラサバ市場こそ隠れた巨大テーマなのです。

 その点も配慮して回答しますと、まず1つ目の質問ですが、単刀直入に言うとA社さんのような業態の企業が感じている不安は的中しつつあります。つまり、従来型オンプレミスのクラサバを中心として事業を展開しているSI企業は、クラウド化に手を打たずにそのままだと業績が一定の時期に下降することが予想されます。

 また、2つ目の質問であるクラウド時代においてSIベンダーが付加価値を獲得する方法もありますので、安心してください。うまくすると顧客とお付き合いの長いA社さんの方が、新規参入のB社さんより効果的な展開が可能かも知れません。

 ここではその背景や要因を理解して頂くこと、A社さんのようなオンプレミス中心のSI企業が今後取るべき対応方法の2つについて解説します。

 まず、これらの背景について説明しましょう。そもそも業務システムのクラウド化が進むのは3つの面、

  1. 第1に、当初のクラウドはいわゆる「軽いフロント系システム」「周辺システム」を対象としていましたが、基幹系を含めた業務システムでも活用されるようになりつつあるという経緯と事実
  2. 第2に、それを支える技術やソリューションの変化や、クラウド化の顧客メリットが何なのか
  3. 第3に、A社さんの顧客に参入したいベンダーB社の事情

 のそれぞれについて背景や要因について説明しましょう。

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