現在では間違っていたと見なされている、広く普及した従来のパスワード作成ルールの作者は、このルールを作ったことを後悔していると告白した。
大文字、小文字、数字、記号を使った覚えにくいパスワードを作らされ(しかもそれを定期的に変更することを義務づけられ)て、どうしてこんなルールがあるのかと憤ったことがある人は多いだろう。それはおそらく、どこかの開発者が、米国立標準技術研究所(NIST)が2003年に作成した文書に従ったためだ。
この8ページの「NIST Special Publication 800-63別表A」は、NISTの元管理職であるBill Burr氏によって作成された。同氏はすでに引退しており、今では72歳になっている。
Burr氏は、The Wall Street Journalの取材に対して、「今では、わたしが決めたことの大部分について後悔している」と語った。
NISTは2017年6月にパスワード管理ガイドラインの改訂版を最終決定したが、新たなガイドラインでは、同氏が書いた文書に含まれていた推奨事項の多くについて、真逆のことが書かれている。
最新版では、ユーザーに対して定期的なパスワードの変更や複雑なパスワードを要求しないよう推奨している一方で、新しいパスワードがすでに破られていないか、あるいは過去に漏えいしたパスワードリストで、よく使われていることが分かっているパスワード(「1234567」や「password」)ではないかをチェックすることを新たに求めている。
改訂された文書にも書かれているように、過去に漏えいしたパスワード(haveibeenpwnedのデータベースにはすでに数億件のパスワードが収録されている)の分析によれば、複雑なパスワードや定期的な変更を要求するルールは、従来考えられていたほどにはメリットがない一方で、システムの使い勝手を損なっているという。
例えば、パスワードに「password」を使おうとして、大文字と数字が含まれていないとしてシステムに拒否されたユーザーは、「Password1」を選んでしまうかもしれない。また、定期的にパスワードを変更させると、数十のシステムにアクセスする必要がある人は、パスワードを覚えるのが困難になってしまう。中には、忘れるたびにパスワードのリセットを要求しなくてはならず、時間を無駄にしている人もいるだろう。
元々、米陸軍のメインフレームプログラマーだったBurr氏は、New York Timesに対して、本当は実際に使われているパスワードを元にしてガイドラインを作りたかったが、2003年にはその情報が手に入らなかったと述べている。同氏は、NISTのコンピュータ管理者に対して、実際に使われているパスワードを見せてほしいと依頼したが、拒否されたという。
このため同氏は、1980年代に発表されたコンピュータパスワードのセキュリティに関するホワイトペーパーに掲載されていた、古いデータに頼った。
新しいガイダンスでは、新規に作成されたパスワードを検証する責任を負う管理者に対して、過去に漏えいしたパスワードや、辞書に掲載されている単語、文字の繰り返しや123、abcなどの連続した文字、ユーザー自身やサービスの名前を含む語句が、新規パスワードに使われていないかをチェックするよう推奨している。
管理者がユーザーに対してパスワードの変更を強制すべきなのは、パスワードが漏えいした確証がある場合だけとなった。また無作為な長いパスワードを使用する場合、パスワードマネージャを利用できるように、ユーザーがパスワードをペーストできるようにすべきだと推奨している。
さらに同ガイドラインでは、パスワードの長さに関しても言及しており、ユーザーは少なくとも8文字以上のパスワードを選ぶべきであり、システム側も最低64文字のパスワードに対応すべきだと述べている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。