IDC Japanは8月17日、2017年3月に実施したクラウドに関わるユーザー動向調査「CloudView 2017」の結果を発表した。国内市場ではクラウド導入の促進要因として「ITセキュリティの強化」を最も重要視していることが分かった。
国内市場では、既に多くの企業がクラウドを導入しており、ITの導入時に、クラウドと従来型を同等に評価検討する「クラウドオルソー(Cloud Also)」戦略を取る企業が最も多いものの、クラウドを優先的に検討する「クラウドファースト(Cloud First)」へのシフトが見られるようになってきた。
今回の調査では、クラウド導入の促進要因として国内企業で最も多く挙げられたのが「ITセキュリティの強化」だった。クラウドの配備モデル別にみると、ホステッドプライベートクラウドサービス(HPCサービス)でそれが顕著に見られ、56.0%の企業が「ITセキュリティの強化」を導入の促進要因であると回答している。
一方、クラウド導入の懸念事項としても、「セキュリティ」を挙げる企業が最も多かった。国内企業はクラウドの導入に関して、セキュリティの強化に期待している一方で、懸念も抱いているという姿勢が明らかになった。
クラウド導入の促進要因:配備モデル別の上位5項目。複数回答で、それぞれのクラウドを「利用中/検討中」の企業が対象(出典:IDC Japan)
ITベンダーは現在、クラウドに関わるセキュリティの重要性を認識しており、「暗号化」「アクセス管理」「脆弱性対策」などのセキュリティ強化を進めている。一方、セキュリティを強化するためには企業の対応も必要だ。しかし、企業におけるセキュリティ対策は複雑化する傾向が見られ、どこまで実施すればいいのか分かりづらくなっている。
これを踏まえ、同社ITサービス リサーチディレクターの松本聡氏は次のように分析している。
「ITベンダーは、情報の機微性といった視点によってシステムのリスク特性を分析し、リスク特性に応じたセキュリティ対策のガイドラインやテンプレートを整備し、実効性の高いセキュリティ対策を実現するように、企業のクラウド導入を支援することが重要である」
なお、2011年から2016年までの調査で導入の促進要因あるいは期待効果として挙げる企業が多かった「IT予算の削減」については、2017年の調査ではクラウドの導入の促進要因として回答する企業が減少。特に、HPCサービスや、オンプレミス型プライベートクラウドであるエンタープライズプライベートクラウド(EPC)では、導入の促進要因の上位5項目にも挙がっていない。このことは、クラウドによるコスト削減効果に対する過剰な期待が是正され、迅速性の向上といった価値を重要視する企業が増加したためだと同社は見ている。