富士通研究所、国立大学法人九州大学マス・フォア・インダストリ研究所富士通ソーシャル数理共同研究部門、富士通は、最適な保育所入所割り当てを短時間で自動的に算出する人工知能(AI)を用いたマッチング技術を開発した。
この技術を、埼玉県さいたま市の申請者約8000人の匿名化データを用いて検証したところ、わずか数秒で最適な選考結果を算出することに成功した。
さいたま市では、きめ細かい入所選考を行うべく、きょうだい入所への配慮はもちろんのこと、さいたま市独自の「きょうだい入所時の入所タイミング・入所施設・年齢・希望順位」を考慮した入所選考を行ってきた。例えば、7959人の児童に対し、こうした複雑な条件を考慮して311施設に割り当てるケースでは、20~30人の職員が非常に多くの日数をかけて慎重に選考を行う必要がある。
今回開発した技術は、ゲームの理論を利用してすべてのルールを満たす割り当てパターンが複数存在する場合や、1つも存在しない場合にも、優先順位のより高い人の希望が優先されるような、唯一の割り当てパターンを見つけ出す。
例えば、8000人の子供がそれぞれ第5希望まで希望を出すと、5の8000乗通りの組み合わせが発生する。計算機を使っても、それらのすべてを1つずつ調べつくす処理を現実的な時間で終わらせることは困難で、調べる順番を工夫することでルールを満たす割り当てを発見できたとしても、その割り当てよりも良い割り当てがないことを保証するのはさらに困難となる。
今回開発された技術では、入所割り当て先に応じた利得(好ましさ)を点数化し、その点数に基づいて最適な割り当てパターンを見つける。これにより、優先順位の高い人の点数ができる限り高くなる唯一の割り当てパターンを高速に算出することを可能とした。
さいたま市では、同技術の検証結果を高く評価しており、本格導入にも前向きだ。富士通では、自治体向け保育業務支援システム「MICJET MISALIO 子ども・子育て支援」のオプションサービスとして、2017年度中にサービス化する予定。
また、同技術は、富士通のAI技術「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」の1つとして、保育所入所選考業務のみならず、組織内の均質な人材配置を行うマッチング、作業員のスケジュールマッチングなど、様々なマッチング業務に利用できるようにする。