創業13年のオーストラリアのオンライン書店Booktopiaは、常にデータを貴重な資産だと考えてきた。しかし創業後の数年間は、手元にあるデータをほとんど活用できていなかった。
しかしこの10年間は、利用できるリソースも増え、同社はようやく「Emarsys」「HotJar」「Google Analytics」「Optimizely」などのツールを使うことで、知見の発見や意思決定、収益の増加などにデータを生かせるようになってきたという。
データを活用するアプローチはBooktopiaの成長に寄与しており、2004年には1日当たりの売り上げが10豪ドルだった小さなプロジェクトが、前会計年度には年間売上高1億ドル超を生み出す事業にまでなった。
2400万人のサイト訪問者を惹きつけ、毎年400万件の書籍、DVD、雑誌、文具を販売する同社は、個人に合わせた検索や、購入体験の最適化にデータを利用しており、新たな機能を全ユーザーに向けて実装する際にも、データによる検証を重視している。
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Booktopiaの最高技術責任者(CTO)兼副最高経営責任者(CEO)Wayne Baskin氏は、2007年に同社に参加し、倉庫管理システムやコンテンツ管理システムを含む一部のシステムをゼロから組み上げた実績を持つ。同氏は米ZDNetのインタビューに対して、ユーザー体験に変更を加える前に、顧客に関する仮説を検証することの重要性を強調するとともに、データは顧客に関する事実を解き明かすために使うべきで、考えの正しさを証明するために使うべきではないと語った。
赤い旗マーク
以前Booktopiaのマーケティングチームは、商品の在庫が少ないことを示す小さな赤い旗のマークによって、顧客の購入行動が無意識のうちに抑制されている可能性があるという仮説を持っていた。この仮説の理論的根拠は、赤は間違いを表し、行為を止めるべきであることを示す色だからというものだ。
同社は「Optimizely Web Experimentation」を使用してA/Bテストを実施することを決めた。この実験では、50%の顧客には従来どおり在庫が少ない商品に赤い旗マークを表示し、残る50%にオレンジの旗マークを表示して、行動に違いが見られるかが検証された。その結果、赤い旗マークを使った方が顧客転換率が高いことが分かり、マーケティングチームの仮説は否定された。
「どちらも強い印象を伴う色だが、もしマーケティングチームの考えを鵜呑みにして、旗の色を赤色からチームが提案する色に変えていれば、顧客転換率が20%減少していただろう」とBaskin氏は言う。同氏には、Booktopiaに勤め始める前に、GE Capitalでソフトウェアエンジニアとして働いていた経験がある。
「われわれは、その背後にある理由にまでは踏み込まない。ただデータが何を示しているかを理解し、それに従って意思決定を行うだけだ」(Baskin氏)
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もっとも、在庫量を表示すること自体が(それが「在庫あり」であるか、「在庫僅少」であるかに関わらず)、顧客転換率を16.9%、売り上げを6%押し上げることも明らかになった。
Booktopiaのユーザー体験責任者Lara Atechian氏は「われわれの仮説は、顧客に対して在庫が残り少ないことを示せば、購入行動が促進されるというものだった。この仮説を実際に検証してみた結果、仮説は正しかったことが証明されたため、すべてのユーザーに対してこの方式を実装した」と述べている。
送料の表示タイミング
Booktopiaは、ショッピングカートで購入を決定する1ページ前に送料を表示することで、顧客転換率が上昇するかどうかについても検証を行った。もともと同社はウェブサイトのバナーに送料は6.95豪ドルの定額であることを明示していたのだが、決済前に改めて送料を表示することで、透明性が高まるはずだと考えた。
約3年半前にBooktopiaに参加したAtechian氏は、「eコマースの専門家であれば、ほとんど全員が『顧客に対する透明性を確保し、最初から送料を明示するのはよいことだ』と言うはずだ」と話す。