PwC コンサルティングは12月26日、「PwC スポーツ産業調査 2017」を発表した。
これによると、テレビの生放送でスポーツ番組を視聴するというスタイルは次第に減り、インターネット経由でのオンデマンド配信やモバイル端末での視聴といった新しい動きが急速に広がっていることが分かった。また、ミレニアル世代など若い消費者層を中心に、eスポーツやVR・AR技術の活用に期待が集まっている実態も明らかになった。
この調査は、欧州放送連合(EBU)、欧州プロサッカーリーグ(EPFL)、欧州クラブ協会(ECA)、iSportconnect などの協力を得て実施した。調査期間は2017年5月〜6月。スポーツ産業に関わるシニアレベルまたはトップレベルの役職者に質問票を送付し189人からの回答を得た。
「放送およびメディア企業」「リーグおよびクラブ」「国際競技連盟」「広告代理店およびスポーツブランド」などの関係者へのヒアリングの結果、今後3〜5年の成長率については、あらゆる分野の回答者が低下を予測していることが分かった。
特に悲観的な見通しを示しているのは放送関係者で、今後3〜5 年で30%以上成長率が低下すると予測しているという。このことについてPwC コンサルティングでは、OTT(オンライン視聴)の台頭や、メディア消費のトレンドがモバイルやオンデマンドへ移行していることが影響しているとした。
Q.過去 3〜5 年と今後 3〜5 年のスポーツ産業の成長率は? また、主な成長分野は?
Q.スポーツ業界が最も懸念すべき脅威は?
また、若い消費者層の行動変化は、スポーツ業界が最も懸念すべき脅威となっている。デジタルメディアの普及やスポーツコンテンツへのアクセスの多様化により、若い視聴者を意識した新しい形態のスポーツ体験が増加。これを背景に、テレビの生放送は衰退が避けられないとPwCコンサルティングでは見ている。
同社は、この脅威は、メディア放映権市場に大きな影響を与えるとしている。今後、スポーツコンテンツの権利所有者がソーシャルメディアなどの独自チャンネルを開設してファンと直接的に関係を構築したり、大手IT企業が放映権市場に本格参入するなど、大きな変化が起こると予測している。
新しい技術とスポーツとの関係では、ウェアラブル、センサ技術について、発信されるデータの規制や管理が課題となっていることが明らかになった。回答者の3分の1が、アスリートのデータ所有権やプライバシ問題への対策を講じない限り、こうした技術を完全に統制し商業利用することはできないと考えているという。
また、VRやARについては、回答者の68%がVRの普及がスポーツの視聴体験を高めると考えており、過半数は、VRやARが従来型のテレビ放映に影響を及ぼすことは必至と見なしていることも明らかになった。