ユニークな電子チケットの取り組みを始めた西武ライオンズ
現在、スポーツや音楽、エンターテインメントなどの分野において注目を集めている「スマートスタジアム」。観客を収容するスタジアム施設に情報通信技術の仕掛けを大々的に取り入れ、来場者の利便性アップやファンサービス向上などを実現し、より価値の高いユーザー体験を提供しようという取り組みだ。
このスマートスタジアム、米国のプロスポーツ界において取り組みが先行していたが、近年では日本のスポーツ業界においても徐々に事例が出てきている。プロ野球球団「埼玉西武ライオンズ」を運営する西武ライオンズも、ITを取り入れたファンサービス向上に取り組む企業の1社だ。同社は2021年に、本拠地である「メットライフドーム(旧西武ドーム)」の大型改修を予定しており、その際に本格的なスマートスタジアムを実現させるべく、現在プランを練っているところだという。
そんな西武ライオンズが2017年7月から始めたのが、ちょっとユニークな電子チケットの仕組みの導入だ。電子チケットは従来の紙のチケットと比べ、ユーザーがチケットを受け取るための手間が掛からず、不正利用の防止にも役立つため、現在多くのスポーツイベントやエンターテインメントイベントで導入されつつある。しかしその中でも西武ライオンズが導入したものは、従来の電子チケットとは少し趣を異にする。
西武ライオンズ 事業部 マネージャー マーケティンググループ 兼 事業企画グループ 兼 ファンサービスグループの吉田康治氏
「これまでの電子チケットは、お客さまがスマートフォンに専用アプリをダウンロードしないと利用できませんでした。球場に頻繁に足を運んでいただけるコアなファンであれば、アプリのダウンロードに抵抗を感じることはないでしょうが、ファンと同行する友人や家族の方にとっては、やはりアプリのダウンロードはハードルが高いでしょう。従って私たちは、アプリをダウンロードすることなく、ライトなファンでも気軽に使っていただける電子チケットの仕組みを模索していました」
こう語るのは、西武ライオンズ 事業部 マネージャー マーケティンググループ 兼 事業企画グループ 兼 ファンサービスグループの吉田康治氏。専用アプリを前提とした電子チケットの仕組みは、ユーザーに負担を掛けるだけでなく、アプリの開発にもコストと手間が掛かるのがネックだ。そこで西武ライオンズでは、アプリをダウンロードすることなく、ウェブブラウザさえあれば利用できる電子チケットの仕掛けを模索してきた。そんな同社が最終的に選んだのが、「Quick Ticket」と呼ばれる電子チケットの技術だった。
Quick Ticketは、2017年6月からサービス提供が始まった比較的新しい電子チケットサービスだが、「専用アプリのダウンロードが不要」「チケットの“もぎり”を簡単に行える」「低コスト・短期間での立ち上げが可能」といった点が評価され、現在急速にユーザー数を伸ばしている。サービス開始後、1年弱の間で既に1000以上のイベント、50以上の興行主によって採用されており、スポーツ関係では西武ライオンズのほかにもVリーグ、東京シティ競馬、ヴァンラーレ八戸FCなど、数多くの実績を残している。