西武ライオンズが描く“スマートスタジアム”--電子チケット起点でファン体験向上 - (page 2)

吉村哲樹

2018-05-21 07:00

専用アプリではなくウェブブラウザとLINEを通じてサービスを提供

 このQuick Ticketの技術をベースにした西武ライオンズの電子チケット、その利用イメージは次のようなものだ。まずユーザーが試合の観戦チケットをオンライン上で購入すると、LINEやFacebookメッセンジャー、メールなどで電子チケットのURLが送られてくる。その後は、ユーザーがチケットを受領したタイミングや、試合までの間、そして試合当日に球場に入場した瞬間など、「野球の試合観戦」というユーザー体験における主要なタイミングで、SNS(主にLINE)を通じてユーザーにメッセージやコンテンツが届けられる。

 例えば、ユーザーに提示する電子チケットのデザインを適宜変更したり、試合までの間に観戦のポイントや注目選手の情報を提供したり、入場したタイミングで限定コンテンツを配信したりといった具合だ。これによってユーザーは、紙のチケットを購入した場合は得られない特別なユーザー体験を、デジタルチャネルを通じて得られるというわけだ。

チケット発券を起点に来場者とLINEをつなげる。来場者限定の情報発信やコンテンツ販売を行い、試合後のフォローも可能となる
チケット発券を起点に来場者とLINEをつなげる。来場者限定の情報発信やコンテンツ販売を行い、試合後のフォローも可能となる

 一般的な電子チケットでも、同様の体験は専用アプリを通じて得られるが、Quick Ticketの場合は「ウェブブラウザとLINE」という汎用プラットフォーム上で提供されるという点が特徴的だ。これにより、専用アプリのダウンロードにまではなかなか至ってくれない観戦初心者やライトなファンを取り込み、デジタルチャネルを介したユーザー体験の提供を通じてコアなファンへと育成していこうという狙いだ。

 もちろんユーザーにとっても、紙のチケットを受け取りにわざわざプレイガイドの窓口やコンビニの発券機に出向く必要がなくなり、かつ観戦のために有益な情報や、ファンにとってはうれしい特典コンテンツなどが得られるのだから、ファンサービスの向上という面でも大きな効果が見込める。

 「現時点では、販売している観戦チケット全体の12~18%程度を電子チケットが占めていますが、3年後のスタジアム改修時には限りなく100%に近付けていきたいと考えています。ひとまず2018年中には、30%を達成したいと考えています。電子チケットの普及は、お客さまへ提供するサービス品質の向上という目的とともに、そこで得られたデータをマーケティング施策に生かしていきたいという狙いもあります。そのためには、最低でもチケット購入者全体の30%分のデータが必要だと考えています」(吉田氏)

 もちろん、オンライン購入やデジタルデバイスに対して心理的な抵抗があるファンや、紙のチケットに対してこだわりを持つ層に対しても、しっかりケアを継続していく。しかし基本的には、多少時間が掛かったとしても電子チケットの価値をなるべく多くのファンに理解してもらえるよう、周知活動を展開していくという。

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