編集部からのお知らせ
「ZDNet Japan Summit」参加登録受付中! 
新着記事集:「負荷分散」
Sapphire Now

SAPは「C/4HANA」でCRM市場を揺るがすことができるのか

末岡洋子

2018-06-25 07:00

 SAPが「C/4HANA」を発表した。CはCustomer(顧客)のCで、セールス、コマース、マーケティングなどのCRM製品のスイートだ。主力の「S/4HANA」と対になるネーミングで、「SAP HANA」を土台にバックエンドとフロントオフィスが結びつく点を最大の差別化とする。「CRM市場を取るまで屈しない」ーー最高経営責任者(CEO)のBill McDermott氏は強気だ。

SAPのCEO、Bill McDermott氏
SAPのCEO、Bill McDermott氏

 6月5日、フロリダ州オーランドで開催した年次カンファレンス「SAPPHIRE Now 2018」。基調講演のステージに立ったMcDermott氏は、過去最大の2万1000人の来場者の前で「C/4HANA」を発表した。

 「レガシーCRMが邪魔をしている」――McDermott氏は言う。SAPPHIRE Nowの主題となった”インテリジェント・エンタープライズ”では、予測不可能な顧客と市場の動きに合わせて顧客が望む製品やサービスを、顧客がいる場所で(オンライン、提携先の店舗、直営店など)、適切な価格で提供しなければならない。

 素晴らしいユーザーインターフェイスでオンラインショッピングができても、在庫や物流側との連携がなく、配達予定日に届かなかったり、注文後に在庫切れのメールが届くようでは、顧客主導とは言えない。顧客を中心に据た成長こそが、これからの企業の成長路線であるべきだ、と言うのがセールス畑でキャリアを築いてきたMcDermott氏の考えだ。

「C/4HANA」はSAPPHIRE Nowの初日に大々的に発表された。
「C/4HANA」はSAPPHIRE Nowの初日に大々的に発表された。

 それを実現するにあたって、レガシーCRMが邪魔している、と言うのだ。レガシーCRMとは、現在主流のSaaS形式で提供されるCRMだ。各社は営業支援、マーケティングなどのフロントオフィス機能を提供しているが、そのままではERPにある情報と連携しない。記者向けのQAでMcDermott氏は、「経営陣はCRMシステムに記録が加わることなど気にしていない。顧客がどこにいても、然るべきタイミングでサービスを提供できているか、販売につながっているかを気にしている」「顧客について360度の視点を得たいと思っている。360度のセールスオートメーションではない」と暗に最大手Salesforce.comを攻撃する。「SAPにはインメモリのデータベース(SAP HANA)があり、顧客のモバイルデバイスが接続していれば、地理空間情報でどこにいるのかがわかり、在庫や価格情報などと連動しながら適切なオファーができる。これができるベンダーはSAPしかいない」(McDermott氏)。

 C/4HANAは新しい製品ではない。ほとんどが2013年に買収したHybris(その後は「SAP Hybris」)の技術だ。主なコンポーネントは5つ。「SAP Customer Data Cloud」「SAP Sales Cloud」「SAP Commerce Cloud」「SAP Marketing Cloud」「SAP Service Cloud」だ。

「C/4HANA」は5つのクラウドで構成される。
「C/4HANA」は5つのクラウドで構成される。

 バックオフィスとの連携に加えて、GDPRやFacebookのデータ不正流用問題で浮上する「信頼性」も、特徴とする。SAPはここで2017年にGigyaを買収、ファーストパーティとセカンドパーティの顧客データシステム「SAP Customer Data Cloud」とした。合意に基づいたマーケティングが提供できるとする。このほか、2018年1月のCallidus Software、SAPPHIREで発表したCoresystemsなどの買収により、スイートを完成させた。

C/4HANAを率いるカスタマーエクスペリエンストップのAlex Atzberger氏
C/4HANAを率いるカスタマーエクスペリエンストップのAlex Atzberger氏

 これにより、買収後もSAP Hybrisとして名を残したHybrisブランドは終了となった。Hybrisの共同創業者でプレジデントとしてSAP Hybrisを率いて来たCarsten Thomas氏は、2018年始めに退職が明らかされている。新たに「カスタマーエクスペリエンス」として「C/4HANA」を率いるのは、Alex Atzberger氏。元々はSAP Aribaのトップを務めた人物だ。

 だが、CRM市場の現状を見ると、SAPは苦しい立場にある。Gartnerの最新のCRM市場マジッククアドランドではSalesforce.comが圧倒的な首位。Microsoft、Oracleなどが”リーダー”に分類されるなか、SAPは”チャレンジャー”だ。Wall Street Journalは、Salesforce.comのシェアは18.8%、SAPは8.5%としている(リンク先のタイトルURL

)。

Gartnerの2018年5月のCRMカスタマーエンゲージメントセンター市場のマジッククアドランド。SAPはSalesforce.comに大きく遅れを取っている。
Gartnerの2018年5月のCRMカスタマーエンゲージメントセンター市場のマジッククアドランド。SAPはSalesforce.comに大きく遅れを取っている。

 SAPにチャンスはあるのか――。Atzberger氏が「CRMは業務ソフトウェア市場で最大の450億ドルの市場だ」と言えば、McDermott氏は「CRMには十分にSAPが入るスペースがある」と言う。

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

特集

CIO

モバイル

セキュリティ

スペシャル

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. クラウドコンピューティング

    Google Cloudセキュリティ基盤ガイド、設計から運用までのポイントを網羅

  2. セキュリティ

    仮想化・自動化を活用して次世代データセンターを構築したJR東日本情報システム

  3. ビジネスアプリケーション

    スモールスタート思考で業務を改善! 「社内DX」推進のためのキホンを知る

  4. セキュリティ

    Emotetへの感染を導く攻撃メールが多数報告!侵入を前提に対応するEDRの導入が有力な解決策に

  5. セキュリティ

    偽装ウイルスを見抜けず水際対策の重要性を痛感!竹中工務店が実施した2万台のPCを守る方法とは

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNet Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]