拡張現実(AR)は依然として「いまひとつ」な状態にある。多様性が高まっているこの分野を説明するにしては大ざっぱすぎる表現で申し訳ないが、これが筆者のプロフェッショナルとしての意見だ。
エンタープライズ市場では、ARは特にフィールドサービスなどの分野で本物の有用性を発揮しつつあるが、導入状況にはばらつきがある。そして消費者市場では、複合現実(MR)導入の波という幻想に乗り遅れそうだと思い込ませるようなマーケティング的な体験をうたうものも多い。
ただし、ARがまだくすぶっている状態なのは確かだとしても、この分野に大きな可能性があり、将来、人間とその周囲にある世界の関わり方や解釈の仕方を一変させる技術であることも確かだ。
筆者は、2019年にARのどの領域がどのように発展するかについて理解を深めるために、さまざまな業界の企業向けARソリューションを作っている企業Scope ARの共同創業者で、同社の最高経営責任者(CEO)を務めるScott Montgomerie氏に話を聞いた。2019年にARが大きな進歩を遂げると期待できる要因は、以下の3つだ。
ハードウェアの耐久性が高まる
現在、ARの普及を妨げている大きな問題の1つは、ARによるメリットが大きいと見込まれる分野では、作業者がハードウェアに厳しい過酷な環境に行かなくてはならないケースが多いことだ。
Montgomerie氏は、「AR眼鏡やARヘッドセットを使う企業は増えているが、これらのデバイスはまだ壊れやすく値段も高い。このため、ユーザーはこれらのデバイスを、建設現場や石油掘削プラットフォームなどの、デバイスが簡単に壊れてしまうリスクがある環境に持ち込むことを躊躇(ちゅうちょ)している」と述べている。
2019年には、この状況が変わるはずだ。リリース予定とみられるMicrosoftの「HoloLens 2」では、デバイスの耐久性が高まる可能性が高い。現行の「HoloLens」は、企業向けヘッドセットとして人気がある。Digi-Capitalが公開した調査レポート「Augmented/Virtual Reality Report」では、回答者の75%以上が、所属企業にとってもっとも重要なスマートグラスプラットフォームにHoloLensを挙げている。
ARデバイスを手掛けている企業は他にも何社かあるとみられるが、それらの企業も、耐久性を必要とする応用事例に注目しているはずだ。