少子高齢化などで労働人口が減少する中、多くの産業で人手不足が深刻な問題になってきている。ITは果たしてその解決策となり得るか。
2040年の就業者数は2017年に比べて2割減に
厚生労働省が先頃、2040年の就業者数の推計を公表した。それによると、日本経済がゼロ成長に近い状況が続き、女性や高齢者などの労働参加が進まない場合、2040年の就業者数は2017年に比べて1285万人減の5245万人と、20%減少する見通しだ。
これは、厚労省の雇用政策研究会が推計を載せた報告書の素案を公表したもので、同省が2040年の就業者数の推計を出すのは初めてのことだ。
産業別に見ると、就業者数が最も減るのは卸売・小売業で、287万人減(26%減)の830万人となる見込み。同様に減少数が多かったのは、製造業で206万人減(20%減)の803万人、鉱業・建設業で221万人減(45%減)の272万人といったところだ。唯一増えるのは医療・福祉で、103万人増(13%増)の910万人と全産業で最大になる見込みだ。
一方、経済が高成長し、女性や高齢者などの労働参加が進んだ場合、就業者数は506万人減(8%減)の6024万人と推計。子育て期の女性の就業率が下がる「Mカーブ」解消が進むことなどを前提としている。
図1が、2017年と比較した2025年、そして2040年の就業者数の推移を示したグラフで、経済成長と労働参加が進まないケースと進むケース、およびその差が記されている。
図1:就業者数の推移(出典:厚労省雇用政策研究会の報告書)
なお、報告書では人工知能(AI)やロボット、自動化の進展にも言及しており、これらの進展は「人口の減少が見込まれる我が国にとっては、労働生産性向上の重要な要素であり、こうした技術進歩を積極的に活用できる環境を整え、成長へつなげていくことが極めて重要である」との見解を示している。