松岡功の一言もの申す

「サステナビリティーありきのビジネスであれ」--富士通の明言を機にもの申す

松岡功

2024-12-26 10:41

 企業にとって、自らの生業であり成長を目指し続ける「ビジネス」と、環境保全をはじめ社会の持続性を追求する「サステナビリティー」は、どちらが「先にありき」なのか。この問題については本連載でも幾度か取り上げてきたが、富士通のサステナビリティー責任者から見解を聞くことができたので、あらためて考察したい。

ビジネスとサステナビリティーはどちらが先にありきか

 「サステナビリティーが先にありきだ」

写真1:富士通 執行役員 EVP CSSOの山西高志氏
写真1:富士通 執行役員 EVP CSSOの山西高志氏

 富士通 執行役員 EVPで「Chief Sustainability & Supply Chain Officer」(以下、CSSO)を務める山西高志氏は、同社が先頃開いたメディアおよびアナリスト向けのサステナビリティー説明会の質疑応答で、「企業にとってビジネスとサステナビリティーはどちらが先にありきだと考えているか」と聞いた筆者の質問にこう答えた(写真1)。

 筆者も全く同感だ。このことを訴求するため、本連載でもこの問題を幾度か取り上げてきたが、山西氏の発言を機に2024年最後の本連載であらためて考察したい。

 なぜ、山西氏に上記のような質問をしたかといえば、2024年4月にCSSOに就任した同氏が、富士通で初となるサステナビリティーの責任者だからだ。CSSOも新たに設けられた役職だ。

 同氏はCSSOについて、「文字通り、サステナビリティーとサプライチェーンを担う役職だ。この両方を担うことになったのは、サステナビリティーを実現する上でサプライチェーンが最大の課題となりつつある一方、サプライチェーンから見てもサステナビリティーの重要性が高まりつつあるからだ。さらに、サプライチェーンは実事業そのものであることから、実事業を見ている人間がサステナビリティーをリードすることで、これまで当社として掲げてきたサステナビリティーの理念を実行に移すことができると考えたからだ」と説明した(図1)。

図1:CSSOの役割(出典:富士通のサステナビリティー説明会資料)
図1:CSSOの役割(出典:富士通のサステナビリティー説明会資料)

 さらに、同氏は富士通が2020年に定めた「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」というパーパス(存在意義)を実現するため、2023年にマテリアリティー(重要課題)を改定し、必要不可欠な貢献分野として「地球環境問題の解決」「デジタル社会の発展」「人々のウェルビーイング(心身の健康や幸福)の向上」の3つを挙げた。この3つは、すなわちサステナブルな社会を実現する上での課題ともいえる(図2)。

図2:富士通のマテリアリティー(出典:富士通のサステナビリティー説明会資料)
図2:富士通のマテリアリティー(出典:富士通のサステナビリティー説明会資料)

 そんな山西氏に質疑応答で、「企業においてのビジネスとサステナビリティーの関係をどう考えているか」を聞いたところ、次のような答えが返ってきた。

 「企業がサステナビリティーに取り組んでいくためには、ビジネスを成長させて利益をしっかりと得る形でその取り組みを持続させていかなければならないというのが、私の考えだ」

 もっともな回答だが、この内容ではビジネスとサステナビリティーのどちらが先にありきなのか、分かりづらい。そこで、もう一歩踏み込んで聞いた答えが冒頭で紹介した「サステナビリティーが先にありき」という発言である。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    Pマーク改訂で何が変わり、何をすればいいのか?まずは改訂の概要と企業に求められる対応を理解しよう

  2. セキュリティ

    従来型のセキュリティでは太刀打ちできない「生成AIによるサイバー攻撃」撃退法のススメ

  3. 運用管理

    メールアラートは廃止すべき時が来た! IT運用担当者がゆとりを取り戻す5つの方法

  4. セキュリティ

    2025年はクラウドを標的にする攻撃が増加!?調査レポートに見る、今後警戒すべき攻撃トレンド

  5. セキュリティ

    Microsoft Copilot for Security--DXをまい進する三井物産が選んだ理由

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]