富士通、デジタルイノベーションによるサステナビリティー経営の実現を提言

寺島菜央 (編集部)

2022-06-29 09:56

 富士通は6月28日、サステナビリティーに関する調査レポートとデジタルトランスフォーメーション(DX)による持続可能な未来の実現に向けた「Fujitsu Technology and Service Vision 2022」について説明会を開催した。

登壇した技術戦略本部 コミュニケーション戦略統括部 シニアディレクター 西川博氏(左)とシニアマネージャー 田中律秋氏
登壇した技術戦略本部 コミュニケーション戦略統括部 シニアディレクター 西川博氏(左)とシニアマネージャー 田中律秋氏

 エコシステムを通した社会価値の創出とその実現手段としてのデジタルテクノロジーの活用を提言する「Fujitsu Technology and Service Vision」(FT&SV)は今年で10周年を迎える。FT&SV2022では、今後10年のテーマとして、デジタルイノベーションによるサステナビリティー・トランスフォーメーション(SX)の実現を提言した。

 この提言の背景にあるのは、世界が直面するサステナビリティーの危機だ。この課題を克服するために、デジタルテクノロジーは大きな可能性を秘めており、企業が持続可能性を重要視した経営方針へ転換するSXを推進していくことが必要だという。

Fujitsu Technology and Service Vision2022の全体像
Fujitsu Technology and Service Vision2022の全体像

 世界9カ国のビジネスリーダー1800人を対象とした「グローバル・サステナビリティ・トランスフォーメーション調査レポート 2022」の結果から、DXがSXにおいて重要な役割を果たすことが明らかになった。

 実際、どれほどの企業がサステナビリティーを意識しているのかを見てみると、60%の企業が「過去2年間で経営におけるサステナビリティーの優先度が高まった」と回答し、41%が「サステナビリティーは経営課題のトップ3の優先課題」と回答している。サステナビリティーの優先度が高まった理由としては、若い世代のサステナビリティーに対する意識の高まりや、政府や消費者団体からの要請に対応することに加えて、サステナビリティーへの主体的な貢献が企業や商品の価値向上に直結すると積極的にとらえていることにある。

 また、調査対象の60%は生産プロセスを主体的に変革し、45%が製品とサービスの価値を主体的に変革していることが明らかになった。非財務指標を設定してサステナビリティーの取り組みの成果を評価しているのは79%にも上った。

 一方、SXの実践における成熟度は企業によって異なり、54%がサステナビリティー戦略を実行していない「非アクティブ企業」に位置付けられている。成熟したプラクティスを実践する真の「リーダー企業」は5%にとどまった。サステナビリティー・リーダー企業が持つ要素は「パーパス・ドリブン」「ヒューマン・セントリック」「データ・ドリブン」「コネクテッド」の4つで、SXの重要な成功要因だという。

 特に、デジタルテクノロジーの活用はSXの遂行に不可欠な要素だとしている。DXはSXの成功に寄与しているかという問いに対して、「強く同意」「同意」と回答したのは合計67%。サステナビリティー向上のためにデータ、デジタルテクノロジーへの投資拡大を計画している企業は合計60%にも上る。

 また、SXとDXの成熟度に相関関係があるかを調査したところ、SXのリーダーとネクストリーダーはDXにおいても高い成熟度を示した。

 一方、SXを推進する上の課題として最も多かったのは、「経営層がサステナビリティービジョンの策定やサステナビリティー向上の活動に関与していない」が38%だった。ほかにも、社内の抵抗と懐疑や変革が複雑で規模が膨大であることも挙げられた。

 富士通はこれらの結果を受け、「変革には戦略的かつパーパス・ドリブンなリーダーシップが不可欠」であると同時に、「財務目標と非財務目標を含む大胆な計画策定」や「デジタル活用能力の強化」そして「外部エコシステムにテクノロジーパートナーを組み込む」ということが必要であると提言している。

 そして、よりサステナブルな世界を作る要素として必要となるのは、ヒューマンセントリック、データドリブン、コネクテッドだという。富士通は、これら3つの要素に沿った未来ビジョンを掲げた。

 リアル世界とデジタル世界が融合し、ヒューマン・セントリックな経験を実現することで誰もが尊厳を持って可能性を最大化できる「ボーダレス・ワールド」や、持続可能な都市をつくるため、デジタル・リハーサルを行い、ビジネスや社会のレジリエンスを構築する「ダイナミック・レジリエンス」。

 多様な学術研究機関や企業と量子コンピューティング技術を共同開発し、人とテクノロジーが創造的にコラボレーションすることで革新を加速する「ディスカバリー革命」。そして、人・モノ・サービスなどを安心安全につなぐ分散型トラストを確立し、再生型社会をサポートするビジョン。以上の4つをテクノロジービジョンとして据えている。

 このテクノロジービジョンを実現するため、富士通ではコンピューティング、ネットワーク、AI、データ・セキュリティ、コンバージング・テクノロジーの5つの領域に資源を集中。さらに、パートナー企業や大学・研究機関との協働を推進している。

 また、同社はビジネスや社会におけるクロスインダストリーの重要課題の解決を推進するため、新事業として「Fujitsu Uvance」を立ち上げている。同社の先端技術と専門スキル、産業ドメインのナレッジを駆使して、SXを推進していく狙いだ。

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