ハイパーコンバージドインフラ(HCI)市場を切り開き、その管理ソフトウェアの進化形であるマルチクラウド向けOSの展開に注力する米Nutanixが、顧客数を順調に伸ばしている。「マルチクラウド時代の寵児」との見方もあるが、果たしてなり得るのか。創業者でCEO(最高経営責任者)のDheeraj Pandey氏が来日したのを機に話を聞いた。
Oracle DatabaseやJava に続くEnterprise Cloud OS
「Nutanix Enterprise Cloud OSは、ITの歴史上、Oracle DatabaseやJavaに続くポータブルな利用環境を実現したマルチクラウド向けのプラットフォームだ」――。今回のPandey氏への取材で、筆者が一番聞き出せたと思う同氏のコメントを最初に記しておく。Nutanixが現在、普及拡大に注力している「Nutanix Enterprise Cloud OS」の狙いを端的に示した表現だと考えるからだ(写真1)。
写真1:Nutanix CEOのDheeraj Pandey氏
その核心となる話は後述するとして、まずはNutanixのビジネスの現状について紹介しておこう。2009年創業のNutanixは、HCI分野の草分けとして2011年にアプライアンスを商品化したが、もともとソフトウェアメーカーを指向しており、今ではHCIの管理ソフトを進化させたマルチクラウド向けOSのEnterprise Cloud OSを中心にビジネスを展開している。
Pandey氏によると、当初のHCIも含めてEnterprise Cloud OSは世界150カ国で1万2000社を超える導入実績があり、この2年足らずで顧客数が倍増。しかも、顧客ロイヤルティを数値化する指標のNPS(ネット・プロモーター・スコア)で5年連続90ポイント以上を獲得するなど、顧客から好評を得ていることも強調した。2018年度(2018年7月期)の売上高は11億6000万ドル。直近の四半期の売上高伸び率も40%以上と好調で、そうした中で2019年9月には10周年を迎える。
なぜ、マルチクラウド向けOSに注力しているのか。現在、多くの企業がIT利用環境として、パブリッククラウド、プライベートクラウド、オンプレミスを組み合わせたハイブリッドおよびマルチクラウドを求めるようになってきている。そこでNutanixでは、クラウド移行のどの段階でも、パブリッククラウドのメリットであるシンプルな運用、俊敏性、拡張性というメリットを享受しつつ、必要なコントロールやセキュリティを維持できるように、Enterprise Cloud OSの提供を通じて、こうした企業を支援している。ちなみに、同社ではマルチクラウドを、ハイブリッド利用も含めたものとして表現している。
Enterprise Cloud OSはマルチクラウド環境を統合的に管理でき、ハードウェア、ハイパーバイザーやコンテナなどの仮想化環境、クラウドサービスなどの違いを吸収。全てのリソースを可視化し、それを自由自在に扱えるようになるのが特徴である。