コンカーは4月19日、同社サービスの実証実験環境を10団体限定で公共機関に1年間無償提供すると発表した。実証実験では、経費精算・管理の「Concur Expense」、請求書管理の「Concur Invoice」、出張管理の「Concur Travel」を利用することができる。
同社は、出張・経費管理クラウドベンダーSAP Concurの日本法人。経費精算・管理、請求書、出張管理といった間接費管理の高度化に向けてクラウドサービスを提供し、国内では905社が利用している。
コンカーの代表取締役社長を務める三村真宗氏
これまで公共機関では、民間企業と比べて同社サービスの導入に慎重な様子がみられたという。その理由としてコンカー 営業統括本部インダストリー営業本部長の橋本祥生氏は「公共機関は領収書や請求書の処理業務において、業務の効率化よりも組織のガバナンスを重視する傾向があった」と指摘する。だがテクノロジーの進化により、今ではガバナンスと業務効率化の両立は可能だという考えのもと、同社は2019年1月に公共機関向けのチームを立ち上げたと説明する。
地方・国家公務員が経費精算・管理の業務処理にかけている時間を金額換算すると、年間1000億円に上るという。一方、コンカーのサービスを利用した民間企業は業務の約45%を削減。これらを考慮すると、年間で約450億円の生産性向上が見込まれるそうだ。現在、大分市が実証実験への参加を検討していることに加え、某私立大学は研究費管理の高度化に向けて実証実験を行う予定だという。
某証券会社が北海道の倉庫に保有する領収書の山。法人では7年間保存することが定められているため、保管量は膨大。倉庫には領収書を入れた箱が約9000箱あり、年間の倉庫費用は5億円に上るという(出典:コンカー)
公共機関での活用例には、予算管理や研究費管理、海外出張の高度化などがある。公共機関では、民間企業以上に厳格な予算管理が求められ、国からの補助金といった予算の使い道をリアルタイムで可視化することが要求される。コンカーのサービスは、公共機関が与えられた予算の中で経費を支出するためのマネジメントを高度化すると同社は説明する。
例えば研究費管理は、主に大学で必要とされている。大学でも補助金の使い道を報告することが義務づけられているが、請求書や領収書の管理は紙文書がベースになっており、結果として複雑なプロセスや大量の紙書類、多大な作業を要する。だがコンカーのサービスにより、最終的な報告までを一つのプラットホームで行うことができるという。
また公共機関では職員が海外出張する際、テロや災害などを想定して安否を確認しなければならない。これまでは手作業で確認業務をしていたが、コンカーのサービスは手配状況のデジタル化により、位置情報をリアルタイムで把握することを可能にする。実際に、米国のジョージ・ワシントン大学では、学生の安否確認に活用されている。
今回の施策では限定10団体という点について、橋本氏は「公共機関は調達のプロセスが非常に長く、現在のペーパーワークを本当にデジタル化できるのかという不安の声が多いため、実際にサービスを試して効果を認識してほしい」と語った。
同社の橋本祥生氏