ネットワークやセキュリティー技術の展示会「Interop Tokyo 2019」が6月12~14日に千葉・幕張メッセで行われている。ここ数年はSDN(ソフトウェア定義によるネットワーク)に関連したさまざまなソリューションが会場を賑わせてきたが、今回は「ハイパースケール」時代の到来を感じさせる出展も垣間見られた。
「Interop Tokyo 2019」会場。今回は併催イベントを含め472社が出展している
“ハイパースケール”は、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)といったメガクラウドベンダーのサービスを支えるデータセンターやネットワークなどのインフラの規模感を端的に表現したものだ。幾つものデータセンターを束ねた“リージョン”を世界中に配備し、リージョン間を超高速のネットワークで接続する。1つのデータセンターが高度化していくという2010年代初頭までの流れとは桁違いともいえる変化が2010年代後半の今日における状況だろう。
その“ハイパースケール”が国内にも到来する兆しとなりそうなのが、Best of Show Awardのテスティング部門でグランプリに選出されたキーサイト・テクノロジーの「Ixia AresONE-400GE OSFP」だろう。同製品は400ギガビットイーサネット環境向けのテストシステムで、会場ではシスコシステムズの「Cisco Nexus 3000スイッチ」や10社のパートナー製品と接続したデモを行った。
キーサイト・テクノロジーの「Ixia AresONE-400GE OSFP」
同社のイクシアソリューショングループでストラテジックプログラムズ バイスプレジデントを務めるThananya Baldwin氏によれば、メガクラウドベンダーの米国を中心とするデータセンターでは、既に400ギガビットイーサネットが標準的なものとなり始めているという。一方、日本を含む多くのデータセンターでは、100ギガビットイーサネットのインフラが普及してきたところだ。
メガクラウドベンダーには、“破壊者”とも称される急成長を遂げた新興オンライン企業のサービスインフラはもとより、オンプレミスから移行してきた無数のエンタープライズITシステム、さらには人工知能(AI)や高精度シミュレーションなどのハイパフォーマンスコンピューティングに至るまで、膨大なトラフィックのさまざまなワークロードが集中しつつある。この処理を捌くネットワークインフラとして400ギガビットイーサネットが必須になってきたという。
ただし今後は、幾つものクラウドを組み合わせるマルチクラウド利用が広がれば、メガクラウドベンダーの周辺から400ギガビットイーサネットのインフラも広がり始めていくと見られる。2000年代後半に登場した100ギガビットのソリューションが現在のように普及するまで10年近くを要しているが、400ギガビットのソリューションはより早いペースで拡大する可能性もある。
「とにかくあらゆるデータのトラフィックが爆発的に増えていて、日本のデータセンターも東京五輪や5Gを契機にハイパースケールに入っていくことになるだろう。Ixia AresONE-400GE OSFPについても、日本のプロバイダーが既にテスト中だ」(Baldwin氏)
同社は、併せてパケット・ブローカー「Vision X」の実機を世界で初めて出展し、こちらもBest of Show Awardの審査員特別賞に選出された。3Uサイズに拡張可能なモジュラー構造を採用し、最大6Tbpsのスイッチング能力と10~100Gbpsのマルチスピード対応などが特徴だ。イクシアソリューショングループ マーケティングマネージャーの小圷義之氏は、「400ギガビット時代を見据えてモジュールを交換すれば、通信の復号処理やパケット解析など1台でさまざまな用途に拡張していける設計」と語る。
キーサイト・テクノロジーの「Vision Xネットワーク・パケット・ブローカー」