データサイエンティスト協会は7月12日、匿名加工情報に関する記者説明会を開催した。一般消費者を対象とした意識調査の結果と、それを取り巻く現状や課題について、データサイエンティスト協会 コミュニティ・ハブ委員会 委員長でSOMPOホールディングス チーフ・データサイエンティストの中林紀彦氏が解説した。
近年、ビッグデータの流通や活用に対するニーズが高まる中で、特定の個人を識別できないように個人情報を加工し、復元できないようにした匿名加工情報の重要性が増している。匿名加工情報は、2017年5月施行の改正個人情報保護法で導入され、金融分野や医療分野などさまざまな企業からの期待が高まっている。
データサイエンティスト協会 コミュニティ・ハブ委員会 委員長でSOMPOホールディングス チーフ・データサイエンティストの中林紀彦氏
また、近年のAI(人工知能)関連技術の発展も後押しとなり、社外とのデータ連携によるデータ活用を模索する企業が増えてきている。その一方、2013年に発生した交通系ICカード「Suica」のデータ流通問題移行、企業側に評判や風評などのリスクを回避する動きが強く働き、データの自由な流通や活用がほとんど進んでいない状況になる。
そんな中、企業のデータ活用に関する課題の調査・研究や、会員によるノウハウ共有などを行うコミュニティ・ハブ委員会は、昨今のデータ流通市場の形成に関する国や市場の動向を踏まえ、一般消費者1643人を対象にした匿名加工情報の利用に関する意識調査(2019年2月)をインターネットで実施した。
調査結果によると、匿名加工情報の認知度について、「知っている」と答えた回答者は15.9%と低いことが分かった。匿名加工情報の内容まで知っていた回答者はわずか3.8%にとどまった。
匿名加工情報を利用することへの賛否については、「どちらでもない・わからない」が過半数(56.6%)を占める結果となった。「匿名加工情報を知らない人が大半を占めるため賛否を問われても判断できない状況にある」と中林氏は推察する。
一方で、公共の研究を目的とした匿名加工情報の利用については、「自然災害に関する公的な研究」への許容度が43.8%と比較的高いことが分かった。しかしながら、自然災害時の活用であっても、「一般論としては賛成だが、自分の情報の利用には反対である」という回答が32.7%を占めており、公共の研究を目的とした場合でも、反対者に対する配慮が必要になるとしている。
それでは、自然災害時のデータ活用については、どこまでの属性情報が許容されるのだろうか。調査によると、「性別」「年齢(生年)」「居住地(都道府県)」については約9割の回答者が利用されることを許容すること分かった。一方で、「所属団体・企業名」(12.6%)、「役職」(14.7%)、「年収幅」(17.5%)などの属性情報に対する許容度は低かった。
「自然災害時の活用については許容度が高いため、すぐに取り組みを開始できる状況にある。活用する場の提供や事例公開を行い、企業からのデータ提供を後押ししていく」(中林氏)
さらに、一般消費者の理解を得ることが何よりも重要であり、来年度に向けた個人情報保護法改正の動きに合わせた認知度の向上と、理解の促進に官民共同で取り組んでくべきだと提言する。