世界経済フォーラム(World Economic Forum:WFE)がグローバル企業313社を対象にした調査によれば、技術進歩によって2022年までには7500万人の雇用が失われる一方で、1億3300万人の雇用が見込めるという。「人工知能(AI)によって雇用が失われる」という報道に疑念を投げ掛ける結果となっている。
調査は「The Future of jobs 2018」としてまとめられているが、日本企業に絞り込んで調査しており、経営幹部が従業員に対して必要と感じている領域は「既存従業員に対する“リスキリング(Reskilling)”の投資(54%)」がトップだった。
企業内研修や人材開発コンサルティングなどを手掛けるセルム(渋谷区)の常務執行役員 加藤友希氏はこうした調査結果に触れながら、「リスキリングの必要性が従業員に問われている」と主張した。加藤氏はコーナーストーンオンデマンドが7月10日に開いたイベント「CONVERGE TOKYO 2019」の中で「スキルは獲得しても発揮できなければ意味がない。何があれば発揮できるのか?」という講演に登壇した。
セルム 常務執行役員 加藤友希氏
「リスキリング=新たな能力の取得」が必要になる理由として加藤氏は事業資産構成の変化が顕著な例だと語る。
たとえば某社はA事業が主力だったものの、技術革新や社会変化に応じて事業を取りまく環境が変化し、サブだったB事業や新規事業創出が求められるケースは、読者諸氏の周辺を見渡しても枚挙に暇がないだろう。
とあるBtoBサービス業は同社に対して、顧客需要の変化と競争激化を踏まえて「“今後”求める人物像」を明確にした上で企業内の人材配置や育成システム、職場環境作りに取り組んだという。
別の事例を見ても、金融サービス企業に勤めるITマネージャーがシニア開発者、ビジネスアナリストがアジャイルプロダクトオーナーといったケースは枚挙に暇がない。
「The Future of jobs」は2016年に発表されたが、2018年にはその傾向が変わっている。2016年版を見ても今この瞬間、多くのビジネスシーンで求められる能力が列挙されたように感じるが、あくまでも数年前の調査結果である。
直近である2018年では「分析的思考法とイノベーション」「アクティブラーニングと学習戦略」「感情知能」「推論、問題解決、観念化」「リーダーシップと社会的影響力」が新たに登場し、さらに2022年には「テクノロジーデザインとプログラミング」「システム分析と評価」といった新たなスキルが表出しているのが見て取れるだろう。