本連載では、筆者が「気になるIT(技術、製品、サービス)」を取り上げ、その概要とともに気になるポイントを挙げてみたい。今回はITに関連する気になる調査レポートとして、PwC Japanグループ(PwC)が先頃発表した「世界の消費者意識調査2019」を取り上げる。
PwCが説くROX(体験からのリターン)の重要性
「PwCは企業の成功を判断する指標として、従来の投資効果(ROI:Return on Investment)に加え、カスタマーエクスペリエンス(顧客の体験、CX:Customer Experience)に着目した指標を導入すべきだと考えている。企業はもっとCXに投資したほうがよい、というのがPwCの考え方だ」
この一文は、PwCが先頃発表した消費者の購買活動に関する年次調査レポート「世界の消費者意識調査2019」日本語版の冒頭部分から抜粋したものである。
CXに着目した指標とは何か。PwCはそれを「体験からのリターン(ROX:Return on Experience)」と呼び、「ROXの評価により、企業は、消費者と自社ブランドの相互作用に直接関係する部分への投資が、どれほどの収益を創出しているかを理解できるようになる」と説いている。
すなわち、企業にとってはROIだけでなくROXも重要というわけだ。ROXというのが耳慣れない言葉だったこともあって、筆者はこの調査レポートに興味を抱いた。内容はPDFファイルで公開されているのでご参照いただくとして、ここではその中から、レポートの最後にまとめられている、小売業を対象とした「日本においてROXを改善すべき6つの理由」のうちの1つに焦点を当てたい。
表1:日本においてROXを改善すべき6つの理由(出典:PwC)
なお、この調査は、PwCが日本を含む27の国と地域の2万1480人のオンライン消費者を対象に実施し、消費者の購入形態などの動向を考察したものである。
ROXの改善へEXあってのCXだと肝に銘じよ
日本においてROXを改善すべき6つの理由は、表1に示した通りである。ここでは、この中から1つ目の「CXとEXを融合させる」に注目したい。EXとは「エンプロイーエクスペリエンス(従業員の体験、Employee Experience)」のことである。