クラウドストライク、東京五輪を狙うサイバー攻撃を予想

國谷武史 (編集部)

2019-09-10 15:23

 クラウドストライクは9月10日、セキュリティ脅威動向をもとに予想したという東京五輪を狙うサイバー攻撃について説明会を開いた。セキュリティ対策でのインテリジェンスの活用を訴求している。

CrowdStrike インテリジェンス担当バイスプレジデントのAdam Meyers氏
CrowdStrike インテリジェンス担当バイスプレジデントのAdam Meyers氏

 説明会で予想内容を解説したインテリジェンス担当バイスプレジデントのAdam Meyers氏は、諜報やインテリジェンス分野で著名なRobert M. Clark氏の言葉を引用し、インテリジェンスの言葉の意味を「対立する相手が認めたがらない情報を入手することで不確実性を減らすこと」と紹介。同社は、2020年に開催される東京五輪が世界的な注目を集めるとし、イベントに便乗してサイバー攻撃を仕掛ける可能性のある組織や人物とその狙いなどを予想したという。

 まずMeyers氏は、サイバー攻撃者を、国家的な支援を受けてスパイや妨害工作などを仕掛ける組織、ランサムウェアや詐欺などで金銭を狙う犯罪組織および人物、特定の思想に基づいて主張する活動家(サイバー空間ではハクティビストと呼ばれる)の3つに分類。直近で同社が観測した日本を狙うサイバー攻撃では、商業捕鯨の再開をめぐる日本政府と国際社会の動向や日韓の対立などを背景にしたもの、あるいは大企業での大規模な顧客情報の漏えい事故、日本に関係したマルウェアの拡散行為などがあり、3つに分類されるサイバー攻撃者が何らかの目的や動機で実行した可能性があるとした。

CrowdStrikeの分析から攻撃グループの能力と動機の強さの相関性を示したもの。現時点で日本に攻撃する動機が乏しいグループであっても、今後の状況次第で能力を生かした攻撃を行う可能性もあり得るとしている
CrowdStrikeの分析から攻撃グループの能力と動機の強さの相関性を示したもの。現時点で日本に攻撃する動機が乏しいグループであっても、今後の状況次第で能力を生かした攻撃を行う可能性もあり得るとしている

 また同社が追跡している日本を狙う攻撃者グループは、中国やインド、北朝鮮、韓国、ロシアなどに多数存在するとした。Meyers氏は、攻撃者グループをその能力と動機の強さによっても分類できるとする。例えば、ハクティビストは個々の攻撃能力は高くはないものの、主義・主張を知らしめたいとする動機は非常に強い。国家的な支援を受ける組織は能力が高く、動機に関しては地政学的あるいは日本との国家的関係によって傾向にばらつきがあるとしている。

 予想される攻撃手法も攻撃者グループに異なるというが、例えば、2018年に韓国・平昌で開催された冬季五輪では、「Olympic Destroyer」と呼ばれるマルウェア攻撃が注目を集めた。同マルウェアは、五輪開幕式での騒動を狙って仕掛けられたと見られている。

 Meyers氏によれば、解析からOlympic Destroyerの開発手法などには北朝鮮系組織の特徴が見られるものの、コンポーネントの一部にはウクライナの企業や組織などに対する2017年の標的型攻撃に使われたマルウェア(NotPetyaなどと呼ばれる)との類似性が見つかった。ウクライナでの標的型攻撃ではロシア系組織の関与が疑われ、また、Olympic Destroyerがビルドされた時期はロシアのドーピング問題が騒がれた。

「Olympic Destroyer」は、トーピング問題に揺れたロシアに関係する攻撃グループがウクライナへの攻撃手法を応用し、平昌冬季五輪で混乱を起こすために仕掛けられたとするのが、西側諸国の見立てだ
「Olympic Destroyer」は、トーピング問題に揺れたロシアに関係する攻撃グループがウクライナへの攻撃手法を応用し、平昌冬季五輪で混乱を起こすために仕掛けられたとするのが、西側諸国の見立てだ

 Meyers氏は、こうした状況をもとに、ロシア系組織が北朝鮮の関与をうかがわせるように細工した上で、Olympic Destroyerの攻撃を実行した可能性があると指摘している。

 東京五輪で具体的にどのような攻撃が発生するのかの予測は困難としながら、Meyers氏は、直近における日本と周辺国との関係性を背景にしたサイバースパイ行為の活発化、ハクティビストによる攻撃運動の展開などが起こり得るとした。一方、2016年のリオデジャネイロ五輪で目立ったという金銭狙いのサイバー犯罪のリスクは東京五輪では低くなるだろうと述べた。

 セキュリティ対策は、東京五輪のような大型イベント時にだけ強化すれば良いわけではないが、良くも悪くも大型イベント時に注目されやすい。このため同社は、セキュリティ脅威への注意や対策強化の啓発を目的に今回の説明会を開いたとのことだ。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    ISMSとPマークは何が違うのか--第三者認証取得を目指す企業が最初に理解すべきこと

  2. 運用管理

    メールアラートは廃止すべき時が来た! IT運用担当者がゆとりを取り戻す5つの方法

  3. 運用管理

    IT管理者ほど見落としがちな「Chrome」設定--ニーズに沿った更新制御も可能に

  4. セキュリティ

    シャドーITも見逃さない!複雑化する企業資産をさまざまな脅威から守る新たなアプローチ「EASM」とは

  5. クラウドコンピューティング

    生成 AI リスクにも対応、調査から考察する Web ブラウザを主体としたゼロトラストセキュリティ

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]