NECとがん治療向けウイルスベース免疫治療の設計開発を行うフランスのバイオテクノロジー企業Transgene SA(Transgene)は1月7日、「TG4050」を評価する「ヒト初回投与試験」に初めて患者を登録したと発表した。TG4050とは、NECの人工知能(AI)技術とTransgeneのウイルスベクターを基にした固形がんに対する個別化免疫療法の基盤「myvacテクノロジー」を基にした治療用ワクチン。
臨床試験の最初の段階「第I相臨床試験」では、手術後に高い再発リスクを抱える頭頸部がんの患者と、手術・アジュバント療法を行った卵巣がんの患者に投与される。アジュバント療法とは腫瘍の主な治療の後、その治療効果を高めるために抗がん剤治療などを行うことを指す。
Transgeneのmyvacテクノロジーは、NECのAI技術であるネオアンチゲン(がん細胞の変異)予測システムで特定・選択された患者固有の変異をコードし、ウイルスベース免疫治療を短期間で始めることを可能にするという。
TG4050は、患者固有の最大30個のネオアンチゲンを標的にするように設計されている。それらは、ネオアンチゲン予測システムを用いて選択される。予測システムは20年以上にわたるAIの専門知識に基づいており、独自の免疫データで訓練され、最も免疫原性の高い配列を効率的に優先順位付けして選択できるという。
Transgeneは、myvacを用いたウイルスベクター技術の専門性を生かしてMVA(Modified Vaccinia Virus Ankara)ウイルスベクターのゲノムに、選択されたネオアンチゲンの配列を組み込む。またTransgeneは、この新しい治療用ワクチンの臨床開発に必要なTG4050の患者ごとのロット製造のため、社内GMP(Good Manufacturing Practice)ユニットを立ち上げたとのことだ。