矢野経済研究所(中野区)は4月27日、国内eラーニング市場に関する調査を発表した。全体のほか法人向け、個人向け各市場の動向、今後の展望などをまとめている。
2019年度の市場規模は、前年度比7.7%増の2354億円。内訳は、企業、団体内個人を含む法人向け市場規模が前年度比5.2%増の684億円。個人向け市場規模が8.8%増の1670億円。両市場ともに拡大が継続するという。
法人向け市場は、良好な景況感で推移したことによる企業の人材育成投資の活性化、働き方改革関連法の施行による業務効率化の追求、eラーニングが学習形態として一般化する環境など、ユーザー数が着実に増加。
一方、競合状況の激化などから学習管理システム(Learning Management System:LMS)、学習コンテンツの一部価格が下落するなど、提供事業者側の課題が散見されるとしている。
個人向け市場は、スマートフォン、タブレットやSNSを活用した学習スタイルの浸透、情報通信技術の向上による提供サービスの進化、人工知能(AI)を用いた学習サービスの登場などにより、ユーザー数が着実に増加。個人の学習形態の一つとして、eラーニングの一般化が進行しているという。
理解を深めるため、動画による解説、オンラインコーチングなどの組み込みが増加し、サービスが多様化。一方で、インターネット上に氾濫する無償の学習サービスとの差別化、事業の収益性などの課題があると指摘している。
新型コロナウイルス(COVID-19)の影響としては、法人、個人向けともに遠隔教育の需要が増加。ユーザー数が増え、2020年度の市場規模は前年度比4.5%増の2460億円としている。
ただし、業績悪化の懸念から企業の人材育成投資費用は削減すると想定。LMS、学習コンテンツの価格下落傾向もあり、法人向け市場の金額とユーザー数は比例しないという。2020年度の法人向け市場規模を前年度比0.9%増の690億円としている。
個人向け市場は、不確実性の要素が多いため対面授業できない学習塾、予備校などでの映像授業配信、双方向性ウェブ授業などの活発化を予測。2020年度の個人向け市場規模を前年度比6.0%増の1770億円としている。
国内eラーニング市場規模推移と予測(出典:矢野経済研究所)
特筆事項として、機械学習、音声認識、自然言語処理といったAIを活用する学習サービスを挙げている。学習者の理解度、習熟度をAIで分析し、それぞれに最適な学習を提供するアダプティブラーニングのほか、語学習得、試験問題の予想、学習アドバイス、学習に対するモチベーション維持などで活用が進んでいるという。効率化や時間短縮、個別最適化、講師、指導者の負担軽減といった観点から、学習塾、予備校などを中心にさらに需要が高まるとしている。
特に英語学習は、効率性や手軽さ、2020年度からの小学5、6年生の英語の教科化、文部科学省が推進する生徒1人につき1台の学習用PC、付随する高速ネットワーク環境などの整備を目指す「GIGAスクール構想」などが後押しし、AIの音声認識技術を活用した英語学習サービス需要が高まるとしている。