プラスチック製品の設計、開発、製造、販売などを事業とするスターライト工業(大阪市旭区、連結従業員数1509人)は、クラウド型統合基幹業務システム(ERP)「Microsoft Dynamics 365」と、単価や原価の計算、シミュレーションなどでサポートする「グローバル製造業向け原価管理テンプレート for Microsoft Dynamics 365」を採用。
2019年10月から広島工場で稼働し、サプライチェーン関連の情報を一元化。システム上の理論在庫、製品別原価計算の精度を向上させ、経営判断へ活用できる体制を整えたという。
6月4日、原価管理テンプレートを提供する日立ソリューションズ(HISOL)が発表した。
自動車部品製造の主要生産拠点となる広島工場は、1974年から運用する基幹業務システムにメインフレームを活用。保守期限、専任のソフトウェア開発担当者の定年が迫り、新しいシステムへの切替えが必要だったという。
棚卸し業務の際は、基幹業務システムと分けて管理するExcelのデータを担当者が都度突き合わせて在庫数を算出。Excelは手入力のため、理論在庫の精度を課題としていたという。
複数製品のまとめしかサマリーとして出力できず、原価計算における製品ごとの収益性把握が困難。原価構造の把握という経営陣からの要望に多くの手間と労力が必要で、作業効率向上も課題だったとしている。
ERPパッケージの採用を基本路線に選定。多様な業種へ対応できるであろうグローバル実績の豊富さ、運用管理の手間、工数を削減できるクラウドサービスを重点的に調査し、Dynamics 365、原価管理テンプレートを採用したという。
原価管理テンプレートの概要イメージ(出典:HISOL)
2017年5月にプロジェクトを開始。稼働時の混乱を防止できるよう先行稼働していた生産スケジューラー「SynPLA」と連携させ、注文書、現品票、ピッキングリストなどの帳票類は現行を踏襲。生産業務を極力変更させないよう務めたとしている。
リスクが高いとされる一斉切り替えだったが、大きな混乱もなく2019年10月1日から稼働。
仕入先への発注履歴、協力会社に支給する部品の入出庫など、在庫数、保管場所を同一システムで一元管理。サプライチェーン全体の在庫管理、理論在庫の精度が向上したという。
製品単位の原価構造を可視化し、実際原価と標準原価の差異の把握、製品ごとの受注時原価の見通し、実際原価との容易な比較が可能。製造コストを最適化できる仕組みを実現したと説明。
情報の一元管理、クラウドサービスの活用で、システムの運用コストも低減したとしている。
HISOLは、Dynamics 365を活用してグローバルサプライチェーンを一元的に把握、意思決定をサポートする「Microsoft Dynamics 365 統合ERP構築サービス」をグローバルの子会社とともに展開。
日系企業特有の原価計算における配賦、棚卸資産評価をサポートし、グローバルに展開する日系企業の原価精度を向上、製造コストの最適化や利益計画に貢献する原価管理テンプレートのほか、「製造業向けSCMテンプレート」「製造業向け会計テンプレート」、小売業向けの「Dynamics 365 Retail による流通・小売業向けソリューション」などを提供している。
Microsoft Dynamics 365 統合ERP構築サービスとそれぞれの位置づけ(出典:HISOL)