ビジネスが健全な状態にあるかどうかは、経済が止まったときに何が起きるかを見れば分かる。
新型コロナウイルスの感染拡大が起きてから、「あれを知っていたら」と思ったことはなかっただろうか?
どんな情報を追いかけるべきだったのだろうか?
もしそうした情報を持っていたら、備えは違っていただろうか?
違うやり方で事業を再開していただろうか?
「パンデミックなど予測できなくても仕方がない」と考えている人は、一度考え直してみた方がいい。
大企業のテクノロジーに対する投資や導入の状況を知れば、何が重要なのかは明らかだ。多くの企業は、データに基づく戦略や計画、業務プロセスではなく、古くから頼ってきたリーンオートメーションのやり方に従った。リーンオートメーションは線形的な概念で、あらゆることがあらかじめ決まっており、厳格だ。目指すべきは、採算性を向上させることや、少ない資源で多くの成果を出すことに尽きる。機械学習によるオートメーションの時代になってからでさえ、利用されているデータは、一握りのデータソースと1つか2つの指標からなる単純なものに限られている。新型コロナウイルスは、経済活動が停止し、停滞し、再開する過程で、従来の最適化され過ぎたやり方では、ビジネスはうまくいかないことを示した。そのやり方に弾力性が欠けていたのは、データからプロセスを決めていたのではなく、プロセスからデータが決められていたからだ。
しかし、すべての企業や政府がつまずいたわけではない。明暗を分けたのは、公的機関や民間企業のデジタル化がどれだけ進んでいたかだった。生き残った企業や政府は、新型コロナウイルスの流行前も、感染が拡大していた間も、データを活用していた。
大規模検査の実施と感染者の追跡:ドイツのAngela Merkel首相は4月に、感染者の増加ペースや医療体制の余力とバランスを取りながら、国家間移動の開放や経済活動の再開を進めていくと世界に宣言した。Merkel首相は、感染ペースの指標として基本再生産数(R0)を示すことができただけでなく、R0が0.1変化するごとに、どの制限を解除するか、あるいは何を制限するか、どのような対人距離確保命令を出すのかといったことにつながるかを具体的に説明した。同氏はさらに、新型コロナウイルスの陽性患者を治療する医療体制の余力や、一般市民に対する救急救命医療の提供能力と、指標との関連も示した。ドイツはこれを実現するために、大規模な検査と感染者の追跡を実施する手段を整備し、感染状況を把握する必要があった。このようなことは、ニューヨーク州のAndrew Cuomo知事がデータ重視の戦略の多くを同じように実施する上でのモデルとなっているだろう。