日本企業のDX、“守り”でも消極的--“攻め”の普及は2021年以降

藤代格 (編集部)

2020-08-26 07:15

 矢野経済研究所(中野区)は8月25日、国内企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)に対する意識や意欲、取り組み状況などの調査を発表。総じて消極的な姿勢が目立ったと伝えている。

 2020年5月~7月に国内523の民間企業や公的機関に郵送アンケートで調査した。

 革新的な製品、サービスの開発、ビジネスモデルの変革、イノベーションの実現などの“革新的な取り組み”を「攻めのDX」と、基幹システムの刷新やテレワーク対応、既存業務効率化、業務プロセスや組織風土、企業文化変革といった“IT刷新”を「守りのDX」に分けた。

 「8」が積極的、「5」が普通、「2」が消極的、「1」を初めて聞いたと設定した8段階の数値で自社の積極性を聞いている。

 平均値は、攻めのDXが3.37、守りのDXが3.78。どちらも普通を下回り、消極的な姿勢となったという。わずかながら守りのDXが上回り、日本の平均的企業は革新的な取り組みへの意欲が乏しいと指摘している。

 また、守りのDXで「1」を選択した企業が12社、2.3%だった一方で、攻めのDXでは107社、20.5%。ユーザー企業の攻めのDXの低い認知度を指摘しつつ、DX提供ベンダーへさらなる啓蒙の必要性を訴えている。

DXへの意欲の平均値(出典:矢野経済研究所)
DXへの意欲の平均値(出典:矢野経済研究所)

 DX関連ベンダーに対しての調査などから、業種別でのDXへの意欲、意識の高さなども考察している。

 さまざまな業種が混在するため温度差はあるものの、攻めのDXのポテンシャルはサービス業が最も高いという。

 一例として運輸、建設、医療などの高い意欲を紹介。一方、飲食業はSNSを活用したマーケティング、集客、キャッシュレス決済などに留まることが多いと指摘している。

 また、ポテンシャルが膨らみ始めた業種として不動産業を紹介。対面営業の困難さ、内見数の減少、在宅勤務増加に伴う事業所賃貸契約の解約、家賃減額など、新型コロナウイルス感染症流行に伴い環境が大きく変わり始めたと要因を考察している。

 一方、従来から攻めのDXを推進する金融業など、今後の意欲という観点で数値が低く出た可能性もあると補足。また、DXの推進は多くの業種で大手企業から中小企業へという流れが一様にあるという。在宅勤務などの必要性が高い分野を除くと中小企業まで達しておらず、業種別という物差しだけでは測りきれないと説明。攻めのDXの普及期はアフターコロナの2021年以降としている。

攻めのDXの業種別ポテンシャル(出典:矢野経済研究所)
攻めのDXの業種別ポテンシャル(出典:矢野経済研究所)

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