職場には自動化技術が着々と広がっており、一部の従業員は、スマート化が進んだ業界で必要とされる新しい仕事に合わせた再トレーニングができなければ、職を失うのではないかと心配している。
しかし、Microsoftがロンドン大学ゴールドスミスカレッジと共同で発表したレポートによれば、あまり心配する必要はないかもしれない。英国の労働者の4分の3近くは、すでにデジタル経済でも生き残れるだけの適切な組み合わせのスキルを持っているという。
この結論は、最近発表された多くのレポートが、新型コロナウイルスの蔓延によって一部の仕事が新技術に取って代わられる事態が加速していると警告していることとは対照的だ。例えば世界経済フォーラム(WEF)は、今後5年間で、自動化などによって8500万人の仕事が打撃を受ける可能性があると予想している。
WEFは、同じ期間にロボット革命によって9700万人分の新しい仕事が生み出されるとも予想している。こうした「未来の仕事」を得られるかは、データや、人工知能(AI)、クラウドコンピューティングなどの仕事に必要なスキルを持つ従業員の維持に、政府や企業がどの程度意欲を示すかに大きく依存する可能性がある。WEFによると、これらの職種の需要が増加するとみられる。
ゴールドスミスカレッジのイノベーション担当ディレクターであり、Microsoftと共同でこのレポートを執筆したChris Brauer氏は、米ZDNetの取材に対して、「雇用維持の必要性については多くの議論が交わされてきた」と語った。「しかし私たちは、市場にはまだ手つかずの大きな可能性が存在することを明らかにした」と同氏は言う。
レポートでは、この「手つかずの可能性」を「次世代の労働者」と呼んでいる。これらの労働者は2種類のスキルを持っている。彼らはデジタル技術に詳しく、新しい技術を簡単に使いこなす能力を持っているのに加えて、ローコード/ノーコード開発プラットフォームなどのツールの力を借りて、他の人が使うシステムを新たに作る能力も持っているのだ。
重要なのは、ただ使うだけではなく、生み出す能力も併せ持っていることだ。調査によれば、こうした「生み出すためのスキル」は、技術を使うための能力と比べて、企業の業績に2倍近い影響を与えるという。幸い、今は多くの労働者がこの両方の能力を伸ばす手段と意欲を持っている。