アジャイル開発が約束している成果を手にするには、依然として多くの取り組みが必要だ。「アジャイルソフトウェア開発宣言」はソフトウェア開発者と、業務上の責任者の間での密接かつ自由なコラボレーションの重要性をうたった文書であり、今年で発表20周年を迎えた。ただ、この「アジャイル」という言葉はビジネステクノロジーの分野で大流行したにもかかわらず、いまだに単なる流行語で終わっている場合もしばしばある。
提供:Joe McKendrick
大企業がアジャイルソフトウェア開発宣言の価値と原則を受け入れていないというわけではない。むしろほとんどの企業が受け入れている。しかしこういった価値と原則は、ほとんどの企業戦略で中核に据えられておらず、前面に押し出されてもいない。ThoughtWorksの主席クラウドテクノロジストであるKief Morris氏は「アジャイルソフトウェア開発宣言に盛り込まれた考え方が業界内で浸透しているとは必ずしも言えない」と述べ、「人々はテクノロジーについての考え方を変革しなければならないと分かっており、デジタル変革について語っているものの、そのこととアジャイルソフトウェア開発宣言の価値と原則をどのように結びつけるのか、そして現実化する上でどのように活用すればよいのかを本当に理解しているかどうか疑わしい」と続けた。
SAICのソフトウェア担当バイスプレジデントであるBob Ritchie氏によると、問題の根源は「多くの人々がアジャイルソフトウェア開発宣言の着目している哲学に目を向けず、アジャイルをソリューションや処方薬として捉えている」ところにあるとし、「自動化されたテスト駆動開発や、ビルド/デプロイ/迅速なフィードバックというループの自動化といった多くのベストプラクティスは業界内に広く浸透しているものの、なぜそうするのかというところから始めていないが故に、業務やミッションの目標と結びつけられていない場合がしばしばある」と続けた。
われわれがアジャイルソフトウェア開発宣言の当初のビジョンをいまだに実現できていないと感じている人は他にもいる。CloudBeesのDevOpsエバンジェリストであるBrian Dawson氏は「大企業で大々的に実践されているとは到底言えない」と述べ、「われわれは進歩し、さまざまな気付きを得ているものの、言わば巨大な船舶の舵を切っている最中であり、その動きは鈍く、進路は徐々にしか変わっていない。新興企業では、これよりもずっとましであり期待が持てる。というのも、彼らは未来の大企業だからだ。(アジャイルイニシアティブの)あまりにも多くは、プロジェクト計画部門やプロジェクト管理部門で提唱され、その部門から外に出ることがない。アジャイルやDevOpsに向けた変革をサポートする上で、アジャイルはあらゆる利害関係者を巻き込んで実践する必要がある」と続けた。