AI活用やサービス事業者との関係強化を推進--メールセキュリティのVade Secure

國谷武史 (編集部)

2021-04-28 06:00

 メールセキュリティを手掛けるVade Secureは、人工知能(AI)を中心とした技術の展開やマネージドサービスプロバイダー(MSP)向けのサービスの強化を欧州や北米、日本で推進していくと表明した。

 2008年創業の同社は、フランス・リールに本拠を置き、企業やサービスプロバイダーを通じて76カ国で約10億のメールボックスを保護する。直近5年の事業の年平均成長率は39%で、2024年に300%の成長目標を掲げる。国内では、NTTドコモやKDDIのメールセキュリティでも採用されており、約5000万のボックスを保護している。

Vade Secure 製品・サービス最高責任者のAdrien Gendre氏
Vade Secure 製品・サービス最高責任者のAdrien Gendre氏

 製品・サービスの最高責任者を務めるAdrien Gendre氏は、Microsoft 365との密接な連携によるメールセキュリティに強みがあると説明する。Microsoft 365でのビジネスは、2019年から2020年に165%成長し、ユーザーは欧州が54%、北米が26%、日本が15%などとなっている。Microsoft 365における多層的なセキュリティ機能に同社の技術が組み込まれているといい、「Microsoft 365とはネイティブなAPIを通じて連携している。Microsoft側のセキュリティ機能でまず脅威をブロックしつつ、これにわれわれの技術が第2層として防御をすることで標的型攻撃などからユーザーを守る役割を担っている」(Gendre氏)とする。

 Gendre氏によれば、セキュリティ脅威の侵入経路の92%がメールであり、フィッシング型やなりすまし型、マルウェア添付型などのさまざまな種類の脅威をいかに高い精度で検知、ブロックできるかが鍵を握る。同社が保護する約10億のメールボックスには絶えずこうした脅威にさらされているだけに、同社では機械学習や深層学習、自然言語処理などの技術を駆使して、1日当たり約1000億通のメールをスキャンし、同1000万件以上の脅威をブロックしているという。

Microsoft 365では深いレベルのセキュリティで連携する
Microsoft 365では深いレベルのセキュリティで連携する

 Gendre氏は、こうした実績をもとにする検知精度の高いAIベースのアルゴリズム、セキュリティ運用の省力化、自動化などに貢献する技術が同社の強みだとし、2つの方向で事業を強化していく。

 前者では、サードパーティーの製品やサービスとAPI経由で連携し、同社のセキュリティ情報を活用できるようにする。脅威の検知やブロックだけでなく、ユーザーが分析を通じた洞察の獲得やトレーニングによるセキュリティ保護レベルの向上を図れるようパートナーと連携していく。Microsoftとの連携も強化し、両社のソリューションを組み合わせた販売の拡大、また、Azure Sentinelなどを通じたより広範な脅威への対応を実現させる。

 後者では、特にMSPパートナーなどのセキュリティ事業を支援する。従来のメールセキュリティだけでなく、AI活用によるセキュリティ機能の提供やライセンス管理、セキュリティ管理などの機能を拡充していく。「あらゆるMSPがMSSP(マネージドセキュリティサービスプロバイダー)となれるようサポートする」(Gendre氏)と、MSPが彼らの顧客へより高度なセキュリティサービスを提供できるようにすることで、収益性の向上を支援していくという。

事業強化の方向性
事業強化の方向性

 同社は、2016年に日本法人を設立しており、2019~2020年のビジネスは約70%成長したという。4月14日には、シネックスジャパンがチャネルパートナー向けポータルサイト「CLOUDSolv」で、VadeのMicrosoft 365のセキュリティサービスの販売も開始した。Gendre氏は、「日本はわれわれにとって欧州や北米と並ぶ重要市場の1つ。日本への投資を強化しており、技術やデータの活用をはじめ通信事業者やMSPなどの日本のパートナーとコラボレーションを広げていきたい」と話している。

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