カスペルスキーは6月24日、法人向けにサイバーセキュリティを啓発するオンライントレーニングを提供する「Kaspersky Automated Security Awareness Platform(KASAP)」を日本で展開すると発表した。サービス開始は2021年9月を予定している。受講人数は最小5人で、価格は1人当たり年額6900円(税別)。現在は英語版の30日間トライアルが利用可能となっている。
(左から)カスペルスキー 代表取締役社長 藤岡健氏、専務執行役員 宮橋一郎氏、マーケティング部 部長 金野隆氏
サービス提供の背景について、同社 専務執行役員の宮橋一郎氏は「従業員の啓発とスキルの育成」は、「攻撃を予見する」「攻撃を防御する」「攻撃を発見する」「攻撃に対処する」という“インテリジェンス主導の対策サイクル”を支える5番目の柱であることを強調。「全ての従業員の意識改革に基づく行動変容と、サイバーセキュリティ専門人材の育成は今日のサイバー攻撃への耐性を持つ組織の基盤」だと語った。その上で、IT部門などを対象とした専門人材の育成と、現業部門などを対象とした組織全般の底上げ(啓発とトレーニング)の両面に取り組んでいるとした。
KASAPは組織全体のサイバー攻撃耐性を高める啓発とトレーニングの分野での取り組みの一つとなる。この分野では既にゲーム形式のサイバー演習「Interactive Protection Simulation(KIPS)」が提供されているが、そこにKASAPが追加提供される形だ。
「啓発とトレーニング」に対応するKIPSとKASAPの概要
サービスの詳細を紹介した同社 マーケティング部 部長の金野隆氏は、よくある講習プログラムでは受講者側/管理者側ともに実施の負担が大きくあまり効果が望めないことを指摘。KASAPでは「受講者に効率性の高い学習プログラムを提供し、管理者には容易な管理を提供できる」とした。
KASAPでは大きく8つのトピックについて、ビギナーレベルから上級レベルまでの4段階の学習コンテンツを自動化されたトレーニングパスに従って学べるように工夫されている。学習成果がどのくらいの期間保持されるかという研究を行ったドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスが発表した「エビングハウスの忘却曲線」を踏まえ、学習成果の確実な定着を図るために自動的に繰り返し学習が行えるようになっているため、受講者が管理者が自分で学習の進行状況を管理する負担なしに、効果的な学習が可能になるという。
KASAPの特徴の1つである学習成果の定着率向上には「エビングハウスの忘却曲線」を踏まえた仕組みが採り入れられている
さらに、学習コンテンツの作成には同社のサイバー脅威の情報収集と分析、研究による脅威インテリジェンスを活用しており、最新のサイバー脅威の傾向や実例に基づいた定期的なコンテンツアップデートも行われるという。
なお、KASAPの発表に先立って、同社 代表取締役社長の藤岡健氏から2020年度の業績と2021年度の事業展開について説明があった。
同社の2020年度業績は、全社では前年比で7%の成長、事業別で見るとコンシューマー事業が5%増、法人事業が20%増、アライアンス事業が2%増となっており、特に法人事業で大きく伸びている。また、2021年度の重点施策としては「新製品と成長分野への取り組み」「新しいエンドポイントセキュリティフレームワークの推進」「高難度化する標的型攻撃への対応」「ビジネス・パートナーとのエコシステム強化」「日本市場対応の製品リリースと人材育成プログラムの展開」の5点が挙げられた。
同社の2020年度業績