カシオ計算機は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で、独自の「カメラ可視光通信」を使った高精度位置測位システム「picalico(ピカリコ)」による測位実験を12月3日まで実施すると発表した。実施場所はサーティーフォー相模原球場(神奈川県相模原市)としている。
実験は、野球場を月のクレーターに、フィールドを移動するトラクターを月面探査車に見立てて行われる。産業用カメラをトラクターに設置し、観客席に設置した複数のLEDライトから送信する可視光通信の信号を捉えて、それらから算出する位置情報データの精度を確認する。
月面基地イメージ(左)と月面における「picalico」利用イメージ(右)、JAXA提供
この実験は、カメラとLEDライトを使って月面を移動する月面探査車などの位置を正確に把握する技術の実証として行われる。JAXAは、2030年代以降、月面にインフラを構築し、持続的な探査を目指す構想を掲げているが、当面は月に衛星測位システム(GNSS)がないことを想定し、picalicoを活用して共同研究を実施することになった。
picalicoは、LEDライトの発光色を変化させて信号を送信する独自の「カメラ可視光通信」を使い、主に工場の自動搬送機や台車、倉庫のフォークリフトなど作業動線の分析や所在管理に活用できる高精度の位置測位システムとして開発された。2019年3月に提供が開始されている。
「picalico」による計測の仕組み
picalicoによる計測の仕組みは、まず、LEDライトの発光色を変化させて、信号を送信する独自の可視光通信を使用する。信号は、3色(赤・緑・青)の発光色を24回または12回切り替える色変化のパターンで構成され、そのパターンが1つのID情報となる。
フォークリフトなどの現在位置を測位するには、車体に搭載したカメラで天井や壁に設置した複数のLEDライトを撮影し、ID情報を受信し、それぞれのID情報にひもづけられた座標を基に現在位置を算出する。
なお、信号として送信する色変化のパターンは106万2882通りの組み合わせができるほか、カメラ1台で最大100個の信号を同時に受信することが可能だ。