Raspberry Pi Zero 2 Wのフォームファクターは過去のモデルと同じだが、クアッドコアのRP3A0 SoCが追加されている。
提供:Raspberry Pi
「Raspberry Pi Zero」は6年前から提供されており、初代モデルは2015年11月にUSB専用デバイスとして5ドルで発売された。このフォームファクターは長年にわたり進化を続け、2017年に10ドルのワイヤレスモデルが追加され、2018年にはあらかじめはんだ付けされたヘッダーが発売された。しかし、その間も変わらなかったものが1つある。プロセッサーだ。2012年の初代「Raspberry Pi」に搭載されていたおなじみの「BCM2835」がずっと採用されてきた。
10年近くの採用というのは、プロセッサーとしては良いことだが、ワークロードが進化し、Piで構築されるプロジェクトの複雑さが増していくにつれて、BCM2835は古さが目立つようになっていた。筆者は先頃、簡単な監視プロジェクトのために、「Raspberry Pi Zero WH」を4インチのタッチスクリーンに接続して使おうとしたが、すぐに「Raspberry Pi 4」に交換した。折しも、現在のチップ不足を受けて、Pi Zeroの供給が予想よりも早く枯渇し始めた。新しいPi Zeroを発売する準備が進められていたのだろうか。
その予想は正しかったようだ。
新しいRaspberry Piのシリコンパッケージ
それでも、15ドルの「Raspberry Pi Zero 2 W」の発売には少々驚かされた。この新モデルは処理速度がかなり向上しているだけでなく、Raspberry Pi専用の新しいシリコンパッケージ「RP3A0」を内蔵している。「Raspberry Pi 3」と同じクアッドコアの64ビット「ARM Cortex-A53」SoC(「BCM2710A1」)を中心として、プロセッサーダイに512MBのSDRAMが統合されており、メモリーがSoCと同じパッケージ内にある。さらに、独自の銅製ヒートシンクも含まれているため、Pi Zero 2 Wは1GHzでの動作時にも前モデルより低温で動作するはずだ。「RP2040」と違って、Raspberry Pi Foundationが独自に開発したシリコンではないものの、同財団はシリコンパッケージに独自の解釈を加えている。
Raspberry Piチームがシングルボードコンピューターの主要ファミリーに機能を追加し続けることは論理的に思えたかもしれないが、過去に発売した製品を小型化、低価格化したバージョンを提供することは、実際には非常に理にかなっている。Raspberry Pi 4の強力な性能を誰もが必要としているわけではない。Pi Zero 2 Wなら、これまでに学んだすべてのことを生かして、既存の構築物の小型版を作成できるし、十分に小さなコンピューティングモジュールがなかったために延期していたハードウェアプロジェクトに着手することもできる。
その点もPi Zero 2 Wのメリットだ。同製品自体がワイヤレスモジュールの認証を取得しているため、ハードウェアに組み込むのに新しい認証は必要ない。プロトタイプを製品化するのは常に困難だが、プロトタイプを製品の一部にすることができれば、時間を大いに節約できる。Piプラットフォーム上に構築することで、ソフトウェアとOSの両方をワイヤレスで更新することも可能になる。
新旧の比較
Pi Zero 2をPi Zeroと並べると、違いが非常に少ないことが分かるだろう。ボードのサイズは変わらず65mm×30mmで、取り付け穴も同じだ。新しいRP3A0チップがボードの大部分を占めており、その横の大きなシールド部分にすべてのワイヤレス回路が含まれている。前モデルと同じく2基のMicro-USBポート(1基は電源用、もう1基はOTGベースI/O用)と、1基のMini-HDMIポートを備える。すべてが同じ場所にあるため、この新しいボードを旧型のPi Zeroと交換して使えるはずだ。ただし、HDMIポートが少し問題になる可能性がある。ソケットが若干大きくなっているため、3Dプリンターでケースを自作した人は、デザインに少し変更を加える必要があるかもしれない。
その他のポートには、Raspberry Piの標準カメラポートや、PiのGPIOポート用のピンアウトがある。現在のところ、Pi Zero 2には、Pi Zero WHのような一連のヘッダーピンが付属していないので、ユーザーが自分ではんだ付けをする必要がある。それほど難しくはないが、Piにはんだごてを当てる前に練習しておくといいだろう。Pi Zero 2 WでHATを使用するつもりなら、ヘッダーの追加が不可欠だ。