Googleの調査で、女性、黒人、ラテン系、アジア系の開発者が、コードレビューのプロセスで白人の男性エンジニアよりもコードの変更に対して不当な差し戻しを受ける可能性が高いことが判明した。同社はこの問題を解決しようとしている。また、年齢が高い開発者は、若い開発者よりも不当な差し戻しを受ける可能性が高いことも明らかになった。
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Googleは、計算機科学分野の学術誌である「Communications of ACM」に掲載された記事「The Pushback Effects of Race, Ethnicity, Gender, and Age in Code Review」で、コードレビューにおける不当な差し戻しに関する調査結果を明らかにした。
この調査は、IT業界への進出率が低いグループに属するエンジニアの日常的な経験に着目したものだ。
調査によれば、Googleでは、「不当な差し戻し」によって、エンジニアの労働時間にして1日当たり1000時間以上のコストが発生しており、これはレビュワーのコメントに対応するために費やされた時間の約4%に相当するという。そのコストは、主に白人男性以外のエンジニアが負担していた。
調査の結果、Googleの女性エンジニアは、コードレビューの際に不当な差し戻しを受ける確率が男性よりも21%高かった。また、黒人の開発者は白人よりも不当な差し戻しを受ける確率が54%高く、ラテン系は15%、アジア系は42%高かった。また、年齢が高い開発者は、若い開発者よりも不当な差し戻しを受ける可能性が高いことも分かった。
論文の著者らは、調査を行う前に、アジア系の開発者は不当な差し戻しを受ける頻度が少ないのではないかという仮説を立てていたが、この仮説は間違っていた。論文では、「アジア系の人材は工学分野ではより高い役割適合性を持つというステレオタイプによる評価があったため、自分を白人だと認識している人々よりも肯定的な評価を受けているという仮説を立てていた」と述べている。
Googleは、コードレビューの際に起きるこうした問題を解決するため、匿名でのコードレビューが有効かどうかを検討している。この手法には、所属グループによって開発者が受ける不当な差し戻しの発生頻度の偏りを減らすことが期待されている。
検証実験では、300人の開発者に対して、コードの作成者の名前を見ずにレビューを行うことを依頼した。検証には、コードレビュー用のツールに表示される作成者の名前を削除するブラウザ拡張機能が使用された。ただし、匿名でのコードレビューには、複雑な議論が必要になったときに作成者と連絡が取れないという潜在的な問題があるという。
この検証実験では、匿名の場合と匿名でない場合で、レビューにかかる時間と品質に差が無いことが明らかになった。またレビューの種類によっては、レビュワーがコードの作成者を推測することが難しくなることも分かった。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。