インターネット創始者の1人に数えられるVinton Cerf氏は、最近になって急に注目を集めるようになった人工知能(AI)チャットボットの「ChatGPT」を支えるテクノロジーについて、「スネークオイル」(まやかしの万能薬)だと批判している。
「TechSurge Summit」で語る、GoogleのインターネットエバンジェリストであるVinton Cerf氏
提供:Stephen Shankland/CNET
GoogleのインターネットエバンジェリストであるCerf氏は、ChatGPTや、競合する同社の「Bard」に力を与えている大規模言語モデル(LLM)と呼ばれるAIテクノロジーを全面的に否定しているわけではない。しかし同氏は、米国時間2月13日にCelesta Capitalが開催した「TechSurge Summit」において、こうしたテクノロジーは事実に基づく内容を用いて訓練されている場合であっても、もっともらしく見えるものの誤っている情報を生み出す可能性があるという倫理上の問題を抱えていると警告した。
ある企業の幹部が、業務上の問題を解決するためにChatGPTを使ってほしいと同氏に依頼したと考えてほしい。同氏はそのような依頼があった場合、そういった行為は「スネークオイル」、すなわち1800年代の偽医者が売っていたまやかしの薬を使うようなものだとしていさめると述べた。さらに、ChatGPTは台所用品のようなものでもあるとした。
同氏は「これはサラダシューター(野菜をスライスして放出する器具)のようなものだ。つまり、あちこちに向かってレタスが飛び散っていく」と述べ、「事実をあちこちに散りばめた上で、それ以上のことができないために後は混ぜ合わせるだけだ」と続けた。
Cerf氏は、インターネットの基盤であるTCP/IPの設計に携わった功績を認められ、コンピューター科学分野のノーベル賞に相当する「ACM A. M. チューリング賞」を2004年に受賞している。TCP/IPは、データをあるコンピューターから別のコンピューターに転送するためのプロトコルであり、データを小さなパケットに分割し、個々に宛先アドレスを付与することで、送信元から宛先に至るまで個別の経路をとれるようになっている。同氏はAI研究者ではないものの、コンピューターエンジニアであり、AIの欠点を補うために研究者を支援したいと考えている。
OpenAIのChatGPTや、その競合であるGoogleのBardといったテクノロジーは質問に答えたり、電子メールの下書きを作成したり、プレゼンテーションを要約するといったさまざまな作業を実行することで、われわれのオンライン生活を劇的に変革する可能性を秘めている。そしてMicrosoftはGoogleに挑戦するために、OpenAIの言語テクノロジーを「Bing」検索エンジンに組み込み始めており、Microsoft独自のウェブインデックスを用いることで、OpenAIのアイデアを、権威と信頼性のあるドキュメントで「地に足のついたもの」にしようとしている。