オンライン旅行代理店のエクスペディア・グループは3月28日、プロダクト&テクノロジー最高技術責任者(CTO)兼 社長のRathi Murthy(ラティ・マーシー)氏、各ブランドの社長を務めるJon Gieselman(ジョン・ギーゼルマン)氏との記者懇談会を開催し、同社のテクノロジー活用状況を紹介した。
エクスペディア・グループ プロダクト&テクノロジー最高技術責任者 兼 社長のRathi Murthy氏(右)と各ブランドの社長を務めるJon Gieselman氏(左)
エクスペディア・グループは「Expedia」「Hotels.com」「Vrbo」などのブランドを展開し、個人旅行者をサポートしている。同社は、1億6800万人以上のロイヤルティー会員と5万社以上のパートナー企業、300万以上の施設、500以上の航空/レンタカー/クルーズ会社と提携している。
エクスペディア・グループは自社と旅行業界全体において、テクノロジー面の変革を進めているという。自社の変革では、Hotels.comとVrboをExpediaのウェブサイトに集約するなど、複数のブランドを共通のプラットフォームに集めることで、自社の保有する膨大なデータを一元管理している。旅行業界全体の変革では、同社が持つサービスや能力を複数の構成要素に分解してパートナー企業にも利用してもらっている。
Murthy氏は「われわれはこの数年でめざましい変化を遂げた。プラットフォームの集約のほか、パーソナライゼーションを可能にするAIの能力を強化しており、70ペタバイトものデータを保有している。コロナ禍で全ての旅行が中止となり、前例のない量のトラフィックが当社のウェブに押し寄せた。われわれはAIを活用したカスタマーサービスに投資し、現在約70%のトラフィックがセルフサービスで処理できるようになっている」とコロナ禍における自社の取り組みを語った。
エクスペディア・グループは3月24日、OpenAIと連携し、自社のウェブサイトで「ChatGPT」を利用できるようにしたと発表した。これによりユーザーは、ホテルや部屋のタイプ、現地でのアクティビティーなど、膨大な選択肢の中からAIに旅行プランを提案してもらえる。AIはフライトの過去の価格傾向も追跡し、ユーザーが渡航するのに最適な時期を提示する。
一方、現時点ではホテルの空室状況やユーザーの行動パターンなどまでは把握しておらず、Murthy氏は「ChatGPTを活用して情報を補完できている状態」と説明した。現在、旅行プランの提案機能はパイロット版としてテストユーザーに提供しており、今後米国とカナダでリリースすることを予定している。
同社はAIを用いたバーチャルエージェントも構築し、フライトのキャンセルや払い戻しといったトラブル発生時の迅速な解決を支援している。これまで3000万回以上の対話を行っており、事態が複雑な場合は有人サポートに切り替える。結果として、エージェントの対応時間を約800万時間削減しているという。詐欺や不正使用にも対応しており、行動パターンが疑わしい場合はAIがフラグを立て、問題が起きる前に介入することができる。
Gieselman氏は「私とRathiは、コロナ禍のさなかだった約2年前に入社した。われわれを含め、旅行業界全体が難しい時期だった。最近の良いニュースとして、世界的に旅行が戻ってきていることがある。多くの国々では、国内旅行から再開して次第に海外旅行をする傾向が見られる」と旅行業界復活への期待を語った。