アカマイ・テクノロジーズは9月13日、クラウドコンピューティングをはじめとする最新技術の展望を報道関係者向けに説明した。
米Akamai Technologiesのエグゼクティブバイスプレジデントで最高技術責任者(CTO)のRobert Blumofe氏は、創業事業であったコンテンツ配信網(CDN)と、その後に大きく成長したセキュリティ、そして最新事業として加わったクラウドコンピューティングが3本柱となり、同社が「Akamai Connected Cloud」と呼ぶ世界規模に分散されたプラットフォームを通じてソリューションを提供していくという同社の姿を改めて説明した。
Akamai Connected Cloudのコンセプト
その上で、同社のクラウドコンピューティングへの取り組みは最近になって始まったものではなく、創業から1年ほどがたち、新規株式公開(IPO)にこぎつけた1999年10月の創業者のスピーチに、そのコンセプトが既に含まれていたと明かした。
Akamai TechnologiesのRobert Blumofe氏
Blumofe氏は、当時まだ「クラウドコンピューティング」という言葉が生まれておらず、「エッジコンピューティング」と言っていたものだが考え方は共通だという。同社のエッジコンピューティングはもともとCDNのための配信拠点としてインターネット上に大規模に分散されたポイントオブプレゼンス(PoP)をベースとしたものだが、2022年2月に同社がIaaS事業者のLinodeを買収して同社のデータセンター群を獲得したことで、大規模/少数のデータセンターと小規模/大多数のPoPを組み合わせて適材適所で使い分けられるユニークな分散コンピューティング基盤を構築したことで、その戦略が徐々に明確になってきている。
同氏は、Linode由来のデータセンターを「Tens of Core Compute Data Centers」、以前からのPoP群を「Thoudands fo Edge PoPs」と呼び、それぞれの性格の違いについて「コアデータセンターは大量のコンピューティングリソースを集積しており、そこに大量のデータを持ってくる。一方、エッジコンピューティングは逆にデータがある場所にコンピューティングを動かしていくという発想だ」とその違いを説明した。
Akamai Connected Cloudプラットフォーム。Linode由来のデータセンター(東京を含む十数カ所)と多数のPoP群(4100カ所以上)を1つのプラットフォームとして統合している
ハイパースケーラーなどの既存のクラウド事業者は基本的にコアデータセンター型のモデルであることも踏まえ、Blumofe氏は「エッジコンピューティングが次世代クラウドとして機能し始めた」としている。その上でAkamai Connected Cloudでは、Linode由来のコアデータセンターとPoP群の両方が1つのプラットフォームとして提供される点が優位点だとしている。
また同社の人工知能(AI)分野での取り組みについても説明した。セキュリティ分野では、怪しい/疑わしいトラフィックと正常なトラフィックを区別するなどの用途で以前からAI技術を活用してきたという。その上で、最近の生成AIの急速な進化について「フィッシングメールの作成精度が向上し、まるで上司や同僚が書いたように見えるメールを、その言語を知っているわけでもない外国の攻撃者が送りつけることも可能になった」と指摘し、現状は「防御側よりもむしろ攻撃側に有利に活用される状況となっている」と懸念を表明した。
クラウドコンピューティングとAIの関連については、コアデータセンターで学習させたAIをエッジに移動し、そこでデータを処理するといった活用シナリオが考えられるとしている。