HashiCorpは米国時間10月11日、「HashiCorp Cloud Platform（HCP）Waypoint」の新たなビジョンを明らかにするとともに、新機能であるテンプレートとアドオンをサンフランシスコで開催中のカンファレンス「HashiConf 2023」で発表した。
Waypointは、あらゆるプラットフォーム上のあらゆるアプリケーションのデプロイを容易にするプロジェクトとしてスタートした。デプロイに重点を置くことで、アプリケーションログのストリーミングやアプリケーション用の固有なパブリックURLの生成といった機能を搭載し、全ては開発者にPaaS体験を提供することに向けて調整されていたという。
クラウドへの移行が進む中、企業はアプリケーションデリバリーを再考しているとHashiCorpは述べる。企業は、さまざまなツールやインフラをプロビジョニング・管理すると同時に、開発者に一貫したエクスペリエンスを提供する必要があるという。プラットフォームチームは、これらのツールやインフラを開発者に公開し、セルフサービスを可能にし、ガバナンスを実施するという課題を課せられていると同社は指摘する。
プラットフォームチームが直面する課題としては、まず、ソフトウェア管理の複雑さと一貫性がある。プラットフォームチームは、開発チームをサポートするためにさまざまな複雑なツールに依存することが多く、そのため、開発者のエクスペリエンスに一貫性がなくなる可能性がある。また、アプリケーションのニーズはライフサイクルを通じて変化し、その間にインフラ要件も変化する可能性がある。さらに、全てのアプリケーションを追跡し、それらに関するメタデータで注釈を付けることができる記録システムを提供するという課題もある。
このような課題に対応するため、HashiCorpはHCP Waypointのビジョンをアップデートし、プラットフォームチームが開発者向けてゴールデンパターンとワークフローを定義し、大規模なアプリケーションを構築・保守できるようにした。そのゴールは、プラットフォームチームがアプリケーションとその関連メタデータの中央カタログを提供しながら、開発チームに明確で一貫した開発者体験を提供できるようになることにあるという。これは、デプロイメントとアプリケーションのランタイムに重点を置いていたWaypointが当初注力していたこととは異なると同社はいう。
アプリケーションチームが容易に利用できるゴールデンパターンを定義できるようにするという新しいビジョンを実現するため、HashiCorpは、HCP Waypointのテンプレートとアドオンのパブリックベータ版を発表した。プラットフォームチームが組織内のアプリケーションパターンを標準化し、開発チームにゴールデンワークフローを提供することで、迅速な立ち上げと実行を支援することを目的としている。
テンプレートは、インフラ、依存関係、アプリケーションワークフロー、アクセス制御などのアプリケーションのスキャフォールディングを抽象化し、一カ所で標準化できるようにする。
「HashiCorp Terraform」を使用することで、テンプレートは、プラットフォームチームが標準を成文化し、アプリケーションとインフラ作成のためのガードレールをモジュール化されたブループリントに設定できるようにする。これらのブループリントは、組織内で共有・利用され、アプリケーションを環境間でデプロイすることを可能にする。開発者はこれらの定義済みテンプレートを使用することで、インフラの詳細を気にすることなくアプリケーションを開発でき、優れたアプリケーションの構築に集中できるという。
アドオンは、アプリケーションの依存関係を管理する。プラットフォームチームはHashiCorp Terraformを使用してインフラリソースを定義し、アプリケーション開発者が依存関係として利用することを可能にできる。アプリケーションライフサイクルのさまざまな段階で、データベース、キャッシュ、キューなどの依存関係が必要になる場合がある。アプリケーション開発者は、アドオンを使用して、これらのインフラ依存関係をWaypointで定義されたアプリケーションに簡単かつシームレスにインストールできる。
これらの新機能は、新しいHCP Waypointのロードマップを実行する計画の第一弾となるものとHashiCorpはアピールする。さらに、ゴールデンワークフロー、リッチアプリケーションインサイト、環境構築などの追加機能も準備中だという。
（取材協力：HashiCorp）
