ユーザーから企業・組織への問い合わせは、電話からチャットへ、そして、自動応答するチャットボットへと発展してきました。さらに最新のボットサービスでは、テキストだけでなく音声やカメラ、位置情報などさまざまな機能を組み合わせて使えるところまで進化しています。本連載では、生成AIを活用したコミュニケーションサービスの最前線について取り上げ、第1回となる本稿では、AIコミュニケーションサービスとしてボットサービスの活用実態と最新のテクノロジーについて紹介します。
ユーザーがチャットボットを使うのはどういう時?
企業にとっての顧客がその企業のチャットボットを使うのはどういう時でしょうか。恐らく、「知りたいことがあり、ウェブサイトの「よくある質問」(FAQ)のページを見たが分からなかった。サポートに電話してもなかなかつながらないし、チャットですぐに答えてもらえるならそちらの方がいい」という気持ちを抱いた時でしょう。
人手不足が叫ばれる昨今、企業にとってコールセンターや顧客サポートに人員を充てることに対して、できるだけデジタルチャネルで解決することができるならば、コスト削減や人的リソースを有効活用することにもつながります。
こうした背景もあり、さまざまな企業でチャットボットの導入が進みました。はじめは、シナリオ(ルールベース)型や、FAQを登録しておき回答するタイプのボットサービスが普及していました。
シナリオ型とは、あらかじめ想定されるシナリオを準備しておき、ユーザーに選択肢を提示して、選ばれた選択肢に応じて決められた内容を回答するものです。選択肢を選ぶことで次の質問が枝分かれするフローチャート式の対話になっています。このため、誤解答のリスクは低いものの、ユーザーが欲しい回答にたどり着くまで複数のステップを踏む必要があること、ユーザーの知りたいことが選択肢になければ回答を得られないというデメリットがあります。また、分岐が多く複雑なシナリオには不向きです。
FAQ型は、ユーザーがテキスト入力した質問に対して、一問一答で回答を表示します。知りたい内容に該当するQ&Aがあれば、回答は1ステップで提供されるので、大量のFAQの中から自分の知りたい項目を探す手間を省くことができます。一方で、ユーザーがウェブサイトのFAQページを見た上で知りたい情報が見つからず、チャットボットに質問をするケースでは、FAQと同じ回答が出されるため、結果として知りたい情報を得られないということが発生します。ユーザーからすると、結局知りたい回答が得られないという印象になるため、満足度向上にはつながりません。