Autodeskは米国時間10月14~17日、年次イベント「Autodesk University 2024」(AU2024)を開催している。ラスベガスで開催された2023年とは打って変わり、2024年はサンディエゴのコンベンションセンター「San Diego Convention Center」を中心に行われている。
Autodesk Universityには毎年、建築、土木、エンジニアリング、建設、製造、メディア&エンターテインメントの専門家が集結し、2024年は1万2000人以上が参加。「University」という名の通り、各種講演のほか、Autodesk製品を実際に利用したり、参加者同士で交流したりする機会もあり、製品や業界の知見を深められるという。
Autodesk Universityの色に染まったコンベンションセンター
15日の基調講演には、社長 兼 最高経営責任者(CEO)のAndrew Anagnost(アンドリュー・アナグノスト)氏が登壇し、建築・エンジニアリング・建設・運用(AECO)、製品設計・製造(D&M)、メディア・エンターテインメント(M&E)の各領域におけるAutodeskの取り組みを解説した。本記事では、「2028年ロサンゼルスオリンピック・パラリンピック競技大会」(LA28)での取り組みを紹介する。
Autodesk 社長 兼 最高経営責任者(CEO)のAndrew Anagnost氏
Autodeskは、LA28と米国チームの「デザインと創造(Design&Make)のプラットフォーム」に選出されている。ロサンゼルス出身のAnagnost氏は「ロサンゼルスの良いところも悪いところも知っている。多くの人々、有名人、海、文化がある一方、人口密度の高さは課題であり、信じられないような混雑も見られる。ロサンゼルスが過密状態、建築費の高騰、インフラの老朽化に直面する中、LA28の開催までの4年間は重要な意味を持つだろう」と語った。
LA28では常設会場を新築しないといい、Autodeskは既存インフラの改修や一時的なインフラ建設で会場の構築を支援する。同社のソフトウェアは、過去2回五輪会場になった「ロサンゼルス・メモリアル・コロシアム」を含む40以上の競技会場と主要な非競技会場の改修を支援する。Autodeskのソフトウェアは、改修スケジュールの短縮、コストの削減、プロジェクト全体におけるサステナブルな設計理念の導入に役立つとしている。
Autodeskは今後4年間にわたり、建設製品群「Autodesk Construction Cloud」をはじめとしたソリューションを活用し、LA28における会場のデザイン・開発、最終的な完成に関与する数千人もの主要な利害関係者のやりとりを手助けする。
加えて、ソフトウェアとビルディングインフォメーションモデリング(BIM)ツールを用いて革新的な会場計画を支援するとともに、納品計画とサステナビリティー(持続可能性)の両立に向けたコンサルティングサポートを提供する。
LA28はAutodeskと共同で、住民、労働者、企業などが安定して移動できるよう、ロサンゼルスの主要な公共交通機関との連携を進める。LA28は、Autodeskのソフトウェアを活用し、オリンピック関連の主要な交通手段や交通管制計画の設計を支援するという。
基調講演には、LA28の会長を務めるCasey Wasserman(ケイシー・ワッサーマン)氏、「パリパラリンピック2024」の金メダリスト・Ezra FRECH(エズラ・フレック)氏もゲストとして登壇した。
(左から)Wasserman氏、FRECH氏、Anagnost氏。FRECH氏は、米国代表として「男子100メートル」「男子走り高跳び」の2種目で金メダルを獲得した
Wasserman氏は「ほとんどの五輪は、招致が決定した翌日から建設する建物を検討し始める。われわれのプロセスは正反対だ。われわれが使おうとしている全ての会場は、基本的に現在使われているものである」とした上で、ロサンゼルス・ダウンタウンにある屋内競技場「Crypto.com Arena」を例に挙げた。
同競技場は、バスケットボールチームの「Los Angeles Lakers」やナショナルホッケーリーグ(NHL)の「Los Angeles Kings」などの本拠地だが、LA28では体操競技の開催地になる予定だ。
LA28の開会式は7月28日だが、LakersやKingsが大会の決勝試合に出場した場合、2028年6月上旬までCrypto.com Arenaで試合が行われる。そのため、最短3週間ほどでバスケットボールやホッケーの会場を体操の会場に切り替えなければならない。
Wasserman氏は「われわれの挑戦は、招致決定から7年かけて作り上げなければならないものとは逆である。Autodeskのソフトウェアは、会場がどのようなものになるのか、どうすれば移行を短期間で実行できるのか、より効率的で効果的なものにできるのかを可視化する手助けをしてくれる」と精緻な計画の必要性とAutodeskへの期待を述べた。
Anagnost氏(左)とWasserman氏。既存の会場を活用するのは効率的に見えるが、「生かすこと」ならではの苦労もあると力説した
(取材協力:オートデスク)