パートナーとの協業を強化、XDR+Co-Security Serviceを推進--ウィズセキュア

渡邉利和

2025-03-05 11:27

 ウィズセキュアは、2025年事業戦略説明会を開催した。代表執行役社長の藤岡健氏は、同社のフォーカスとして「グローバルで中堅/ミッドマーケットに注力している」とした上で、この領域向けに推進しているポートフォリオ拡大の取り組みについても解説した。

 藤岡氏は、グローバルで実施された事業売却について説明。同社は従来セキュリティ製品を担当する「Elements Company」、Salesforce向けのセキュリティソリューションを担当する「Cloud Protection for Salesforce」(CPSF)、コンサルティング事業を担当する「Cyber security consulting」の3事業を展開していたが、2025年1月にコンサルティング事業をスウェーデンのベンチャーキャピタル・Neqst Partnerに事業売却することが発表された。

 実施は2025年11月の予定だが、「日本のコンサルティングビジネスについては、一応活動停止する形になる。2024年までコンサルティングのビジネスを継続してきたが、本年からは新しいコンサルティングビジネスは行わない」(藤岡氏)という。コンサルティングサービスは国内でも大幅な成長を達成していた事業だったというが、売却後の国内での事業展開については現時点では特に明確になってはいないようだ。

 続いて藤岡氏は、2024年度の業績について説明。部門別売上では、Elements Cloudが71.8%、オンプレミスが18.5%で大半がクラウドで占められている形だ。また、フィンランド企業ということで地域別ではヨーロッパが50.4%、次いで北欧が25.3%となっている。なお、15.9%が「日本&その他の地域」だったが、この内訳は「ほぼ日本のビジネスの業績だとご理解いただいて構わない」(藤岡氏)といい、8.3%である北米の倍近いボリュームであると分かる。

 2025年度の事業戦略についての説明の前に藤岡氏は2024年度の事業戦略について振り返り、「EDR系を中心に、サービスと組み合わせた新しいセキュリティオペレーションを推進していく」とした結果として、過去最高の取引高を達成したと明かした。

 興味深かったのは、ライセンス販売で年額/月額ライセンス共に伸びている点で、従来は大半が年額ライセンスだったのに対し、現在では月額ライセンスを選択する顧客が伸びて年額ライセンスの販売額に匹敵する規模になってきているという。

 こうしたトレンドの変化に関して同氏は「お客さまの方で、フレキシブルに対応できる環境を求めてきている」と分析した。こうした実績を踏まえて藤岡氏は2025年度の国内事業戦略として大きく「パートナー様との更なる協業の推進」と「新しいセキュリティオペレーションの推進」の2つの方針を示した。パートナー協業に関しては、「新しいパートナープログラムの開始」「オンプレミス製品からクラウドへのマイグレーションプログラムの提供」「パートナー向け問い合わせ窓口の一本化」などが具体的な施策として紹介された。

 また、セキュリティオペレーションについては、新たにマネージドサービス(MDR)の提供開始を予定しているほか、脅威管理(Exposure Management:XM)製品やMDR、インシデントレスポンスといったサービスをパートナーとの協業により、日本語で提供できる仕組みを作る予定だとした。同社の国内事業は100%パートナー経由となるため、パートナー向け施策を充実させることで、注力市場である中堅向けのセキュリティソリューションの展開拡大を図る形だ。

WithSecure Corporation 製品&ポートフォリオマネジメント担当バイスプレジデントのArtturi Lehtio氏
WithSecure Corporation 製品&ポートフォリオマネジメント担当バイスプレジデントのArtturi Lehtio氏

 続いて、WithSecure Corporationの製品&ポートフォリオマネジメント担当バイスプレジデントのArtturi Lehtio(アルトゥリ・レティオ)氏が、製品ロードマップについて紹介した。同氏はまず、中核となる「WithSecure Elements Cloud」について「欧州発の、中堅・中小規模企業とそのITパートナー向けのモジュラー型統合セキュリティプラットフォーム」だと紹介し、「増大する規制やコンプライアンス要件に対応するため、効果的で予防的なサイバーセキュリティ機能を必要とするお客さまに最適なソリューション」だと位置付けた。

 Elements Cloudは、攻撃対象となり得る脆弱(ぜいじゃく)性などを発見する「Elements Exposure Management」(XM)、侵入の兆候を検知して対応する「Elements Extended Detection and Response」(XDR)、同社とユーザー企業/パートナー企業が協調してセキュリティを高める活動を行う「Co-Security Services」の3要素を柱とする。

 同氏は、2025年上半期に開催予定の同社の年次イベント「SPHERE25」で発表される予定の製品ロードマップとして、XM分野で「Exposure Management 2.0」、XDR分野で「AWS/Azure向けのXDR」、Co-Security分野で「Exposure Management」サービスの発表が予定されているほか、同社のAI機能「Lumines」の上位版となる「プロレベルのAIアシスタント」として「Luminen Pro」も予定されていると紹介した。

 説明の中で、Lehtio氏がCo-Securityに関して「パートナー企業から顧客を奪おうとするものではない」と繰り返し強調していたのが印象的だった。おそらくパートナー企業の中には同社が直接顧客企業とコンタクトすることを警戒する声もあると推測されるが、サイバー攻撃が激化し、多くの日本企業が被害を受ける中、中堅中小企業においても効果的な防御策を講じられるよう、前向きな取り組みが進展していくことに期待したい。

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