実体経済が減衰する中、「企業は思いのほか早く、IT予算の削減を考え始めている」と、日本オラクルの塚越秀吉氏は指摘する。まだ、具体的な項目までは決まっていないものの、来期のIT予算全体でどの程度の削減ポテンシャルを出すかを検討している段階という。
ERPのみのコスト削減には限界がある
ITのコストについて、塚越氏は「IT予算のボトムラインを下げるとき、大きく2つの視点がある。1つは統合管理の最適化という視点。もう1つがライフサイクル・コストの視点だ」と話す。
ITは使い続けるものであり、管理の最適化についても一過性の取り組みではないため、しっかりとライフサイクル管理を行っていくことが前提となる。では、オラクルは、顧客のITコスト削減の要求に対し、どのように支えていくのだろうか。
「まず、お客様のIT予算の中身を洗い出すことから始める。ERPを使ったコスト削減は、たかが知れているからだ」と塚越氏は言う。
「例えば、在庫管理アプリケーションを使って、在庫削減や回転率を高めるのは当然だが、それは業務を実行してはじめて成立すること。そこでアプリケーションの効果とは明確に切り分けて顧客に話をする」(塚越氏)
塚越氏は、IT予算のそれぞれの項目に対して削減をしかけていくアプローチをとる。そして最終的にオペレーション・コストにも手を入れるという。
オペレーション・コストを増加させる最大の要因は、複雑性と特殊性にある。ここにフォーカスして、ITコストを削減した実在の企業がグローバルハイテク企業の「A社」だ。社名を出すことはできないが、サーバからPC、プリンタ、ソフトウェアまでを世界中に販売しているトップベンダーである。
A社はオラクルのパートナーであり顧客でもある。同社は、様々な改革活動の末、ITコストを抑えることに成功している。
A社では、全部で85カ所のデータセンターを3カ所に集約。5000件のアプリケーションを1500件に、2万2000台のサーバを1万4000台に、そして700以上のデータベースを単一のデータベースに統合した。
「こうした取り組みが何に効いてくるかと言えば、維持メンテナンスの部分だ。そのコストはがくんと落ちる」と塚越氏は言う。大幅なITコスト削減を実現するためには、部分的な対処ではなく、インフラ部分からアプリケーションまでの全体をとらえた取り組みが必要というわけだ。こうしたITコストの全体最適を図るアプローチは、これからますます重要性を増すだろう。