CRMはこれまで、プロセスの自動化やデータ収集、業務の可視化、運用管理性の向上などを目的として使われてきた。これは今でもCRMの重要な役割のひとつだが、2000年代に入り先端的なユーザーは、こうしてCRMに蓄積されたデータを分析し、意思決定を支援するアプリケーションとしても使うようになってきている。そして、今後のCRMの使われ方として日本オラクル アプリケーション製品統括本部 アプリケーションビジネス推進本部長の塚越秀吉氏は、「現場のコミュニケーションから生まれる群集の知恵を活用できるソーシャルアプリケーションのようなものになる」と述べた。
日本オラクルは11月4日、同社のCRMへの取り組みについて説明会を開催し、ソーシャルネットワークの力をCRMに結びつける「ソーシャルCRM」のビジョンを語った。
塚越氏によると、これまでのCRMは営業担当者の活動を主に上司に報告するツールだったが、ソーシャルCRMは「個人の活動から生まれる情報を管理し、コミュニティで活用するコラボレーション機能がついたものになる」という。こうした目的の下、オラクルがソーシャルCRMの第一歩として提供開始したのは「Oracle Sales Prospector」だ。
Sales Prospectorは、過去のデータを分析した上で、営業担当者がアプローチしている顧客の成約可能性を予見し、締結時期や受注金額の見込みを予測する。また、顧客の属性やこれまでに利用した製品の情報、購買履歴なども分析する。「上司に報告するためのツールではなく、こうした情報から営業が次に何をすべきか気づかせてくれるツールだ」と塚越氏は説明する。
Sales Prospector以外にもオラクルでは今後、ソーシャルCRMとして「Oracle Sales Campaigns」「Oracle Sales Library」を発表する予定だ。
Sales Campaignsは、見込み客にアプローチする際に利用するキャンペーンメールなどのテンプレートを提供する。このテンプレートは社内で共有でき、ほかのチームが作ったテンプレートを再利用することもできる。過去に利用されたメールは、開封率や拒否された率もわかるようになっている。
一方のSales Libraryは、提案書が共有できるツールで、提案書のテンプレートをキーワードやタグクラウドで検索し、ダウンロードすることなくアプリケーション上で閲覧可能とするもの。ダウンロードするのは、気に入ったテンプレートを見つけた段階ですればよい。実際に提案書を利用した営業担当者が、提案書のレビューコメントをつけることも可能だ。Sales Libraryは、オラクル社内でも利用しているという。
実際にソーシャル機能をフルに活用するには、社内の知恵を共有する文化や仕組みも必要となるが、そのためのツールはすでに提供されつつある。オラクルでは、2010年以降はこのようにソーシャルコミュニケーションツールとしてCRMが使われるのではないかと見ている。