「IT予算削減元年」にオラクルはどんな価値を提供するのか? - (page 2)

梅田正隆(ロビンソン)

2009-01-16 19:14

“足りないものは買収する”コンプリート戦略

 さて、オラクルのアプリケーション事業は、「Oracle E-Business Suite」(Oracle EBS)を中心に、各業種に対応する機能拡張については買収によって製品ポートフォリオを拡充する戦略をとってきた。今や300を超えるアプリケーション群を持つ。ご存じのように、買収した企業は、ピープルソフト、シーベル、ハイペリオン、BEAなど、各分野のトップランナーがほとんどだ。

 オラクルによる買収以前は、顧客が自分でこれらのアプリケーションをつないで使用してきた。一方、買収後はオラクルが顧客の代わりにつないで提供することになる。顧客にとっては、インテグレーションのコストが減ったわけだ。

 気づいたら、「ビジネスアプリケーションがオラクルに染まっていた」という企業も実際にある。例えば、金属資源サプライヤーの世界最大手である「B社」だ。同業他社のC社(カナダ)の買収を行うなど、不況下でも急成長を遂げた注目の企業である。

 「M&Aによる成長戦略は、ビジネスを複雑にする。製品が増え、エリアが増え、社員も増え、顧客も増える。これを合理化し、最適化して、効率よく回す必要がある。現在、B社のビジネスは、ほとんどがオラクル製品で動いている」(塚越氏)

 B社はC社買収の準備を2002年ごろから開始し、SAPとOracleを比較検討した上で、Oracle EBSを採用した。しかしその際、営業や物流、戦略会計などに特化した業務については、オラクル以外のSiebelやG-Log、Hyperionなどの製品を採用していた。自社の業務を実現するために、個別の業務に最適な製品を購入し、自らつないだ。現在では、これらの製品はすべて、オラクルの製品になっている。オラクルの「コンプリート戦略」を象徴するケースと言える。

 「お客様がやりたい業務、もしくは戦略的に強化したい業務に対して、アプリケーションを整え、テクノロジーインフラを整えていき、足りない部分は買収してでもお客様に提供する。これがオラクルの戦略であり、お客様に提供できる価値だ」 (塚越氏)

 経営環境が厳しさを増す中、オラクルは顧客のITトータル・ライフサイクル・コストの最適化を支援していく考えだ。

記事中に登場した金属資源サプライヤー「B社」の戦略的業務プロセスとアプリケーション。買収戦略により、ほとんどがオラクルの製品となった。画像の上にマウスポインタを乗せると「ソリューション適用後」のイメージに切り替わる。(出典:日本オラクル)

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